【カラワン 工場近隣の村で】(上)輸入ごみに沸く村 不法廃プラにドル札も
ごみの輸入をめぐる議論が活発化している。古紙などに混ざって送られてくる廃プラスチックなどの不法ごみが国際的に問題となっており、インドネシアも輸出元の米国に送り返すなど対応を厳格化。輸入された不法ごみの行方を追うと、西ジャワ州カラワン県のある村に行きついた。
ジャカルタ中心部から車で3時間半のカラワン県タマンサリ村。羊の群れが時折道を横切るのどかな村のあちこちに、厚い黒煙が立ち上っていた。民家前には、何層にも積み重なったプラスチックごみの山。よく見れば、食品の袋には英語が書かれ、米国の銀行のクレジットカードもある。カラワン県やブカシ県の再生紙工場から運び込まれたという「輸入ごみ」だ。
工場を監査したカラワン県環境清掃局によると、これらの工場は再生紙の原料として古紙を輸入。輸入自体は合法なのだが、問題は廃プラスチックや金属などの不法ごみが多数混入していることだ。古紙との分別後、行き場のなくなった不法ごみは、業者を介し、タマンサリ村の住民に売られるようになったという。
アデ・ジュナイディさん(42)さんは、約1年前から輸入ごみを引き受けるようになった。運搬費としてダンプトラック1台分につき40万~50万ルピアを支払い、多い時は1日に30台分のごみが届いた。
自宅前の空き地に運び込まれたごみは仕分けし、金属や缶はリサイクル業者に販売。最も高いアルミニウムで1キロ当たり1万5千ルピアになる。
最初は夫婦で始めた仕事だが、ごみの量とともに仲間も増え、ピーク時には100人近くに。高齢者や村の外から働きに来る人もいた。同様の現象は他の家でも見られ、村は輸入ごみに沸いた。
ごみを引き取る目的はリサイクルだけではない。「ドル札がたくさん見つかって、皆で月に1億ルピア分稼いだこともあったんだ」。アデさんがごみの中から見つけたという外国紙幣の写真をスマホで見せてもらうと、米ドルの他に豪ドルや中国の人民元も。輸入ごみならではの「収入」だ。
アデさんがかつて、ワルン(食堂)を営んでいた時の月収は150万~300万ルピア。輸入ごみを扱うようになってからは、少ない月でも500万ルピア稼いだ。「子どもたちも親の働く姿を見て学べる。今では小学1年生の末娘もリサイクルの分別がつく。いい仕事だよ」
一方でリサイクルできないごみも全体の4割ほどある。その多くが廃プラスチックで、焼却するという。「ここで燃やしたら苦情が来るから、あっちでね」。案内された先は見慣れない窯。黒煙の出どころはこれだった。 (つづく)
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行き場を失った輸入ごみに工業廃水——。それらは人々の生活をどう変えたのか。カラワン県の工場近隣の村々を歩いた。(木村綾、写真も)