費用の借金70万円に苦慮 「強制帰国」実習生 「今も日本で働きたい」

 技能実習の受け入れ先から「強制帰国」をさせられたのは不当だとして、監理団体などを提訴したインドネシア人のリキ・アムルーラさん(26)=西ジャワ州インドラマユ県出身=が19日までに、じゃかるた新聞のインタビューに応じた。送り出し団体に支払う費用などとして70万円の借金をしていることを明らかにし、「借金をどう返していけばいいか」と、苦しい胸の内を吐露した。「今でも日本が好き。日本で働きたい」と、思いを語った。

 リキさんは、南ジャカルタの送り出し団体「LPK グナマンディリ」を通じて17年9月に面接を受け、中亜国際協同組合(広島市安芸区)が監理団体となり、カキ養殖業「マルコ水産」(東広島市)で実習することが決まった。
 これ以前に、リキさんは別の送り出し団体に登録し、費用も支払っていたが、「面接があると言われて待っていたけど、3カ月間たっても面接はなかった」ため、グナマンディリに登録していたと話す。

■缶コーヒー飲むと……
 グナマンディリで10〜12月の2カ月弱、日本語の勉強をした後、1月8日ごろに日本に行った。ところが、中亜国際協同組合で日本語の研修が始まって数日後、異変があったという。「自動販売機で缶コーヒーを買って、休憩中に飲んでいると、それを理由に、監理団体の代表から『インドネシアの金持ちなのか』と言われた」と振り返る。「お金があったら、実習に来ていない」と悔しかったが、「当時は『もっと頑張らないと』とも思った」と話す。
 1月下旬になり、中亜の幹部から日本語の理解不足を理由に帰国を促され、リキさんは地元の労働組合を頼り、話し合いをした。労働組合関係者のいない場所で、「監理団体と(送り出し団体の)インドネシア語通訳が私の前で話をした後、私に帰国するよう指示した」と話す。
 当時は、日本語ができるようになったら再入国できると言われ、「勉強をして戻れるようになろうと思っていた。まだ中亜を信じていた」。帰国後、グナマンディリのスタッフに「もっと勉強をしたい」と伝えると、「誰に言われてここに来たのか」と言われ、取り合ってもらえず、独学で勉強をすることになった。「グナマンディリから毎日のように電話があったこともあるが、彼らは私を助けてくれなかったので出なかった」と不信感を表す。

■ブラックリスト
 帰国後に2度、中亜国際協同組合の幹部がインドネシアを訪れ、リキさんに「ブラックリストに載っていて、もう来られない」と告げた。その後、「自分の意思で帰った」などの書面をリキさんに書かせたという。「書面に同意をすれば、また日本に行けるかもしれない」と期待する気持ちがあったからだ、と語る。
 リキさんを支援する広島市の労働組合は、一連の中亜側の対応を不当労働行為だとして県労働委員会に申し立てている。その過程で受け入れ側から提出された雇用条件書(契約書)について、リキさんは「僕が聞いていた時給と違った。署名は僕の筆跡じゃなかった」と指摘している。
 リキさんは現在、一家の水田を抵当にして捻出した70万円の借金を抱える。送り出し団体への費用と家族の生活費を知人から借りている。日本で働けず、「借金があり、どう返していけばいいか」と困惑している。農業を営む両親ときょうだいの5人暮らし。姉も家計を支えるために、日本で技能実習生をしている。リキさんは、今月からジャカルタ首都圏の建設業者で働く。3カ月の短期契約だ。
 日本のアニメや文化が好きで「日本で働くことが夢だった」というリキさん。「今でも日本が好き。日本で受け入れてくれる会社があれば働きたい」と話した。
 じゃかるた新聞は今月上旬に中亜国際協同組合を訪問し、一連の経緯について取材を申し込んだが、中亜幹部は「今は話せない」と語った。このため「話せる時期になったら連絡をいただきたい」と要請したが、19日現在、連絡はない。(木許はるみ、米元文秋)

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