社会的分断が深刻化  アジ研・川村晃一氏 大統領選分析  

 東南アジア比較政治研究会は15日、東京・三田の慶応大学で研究会「東南アジア民主主義の行方: タイ・インドネシア・フィリピンの選挙から考える」を開催し、最近の一連の選挙について議論した。インドネシアについてはアジア経済研究所の川村晃一主査が発表を行い、4月に投票された大統領選では「2017年のジャカルタ特別州の前に顕在化したイスラム勢力の影響力拡大と、社会的分断の流れは止められなかった」と分析した。
 川村氏は前回14年と今回の大統領選での州別の得票率データを示し、穏健イスラム教徒が多い中東部ジャワと、東部の非イスラム地域の「世俗派」が現職ジョコウィ候補に、スマトラ各州や西ジャワ、南スラウェシなどの「(保守的)イスラム派」が野党プラボウォ候補に投票したと指摘。「得票の地域的偏在は過去最大だった」と述べた。
 また、選挙戦が全般に「静か」だった一方で、大統領選両陣営がサイバー部隊を動員し、ヘイト関連ネタやフェイクニュースを発信する「熱いサイバー戦」が行われた、と説明した。
 こうした選挙が今後の政治に与える影響について、「イスラムが優越すべきだ」との考え方の広まりや、国是「多様性の統一」に対するコンセンサスの低下を挙げた。
 さらに、5月の大統領選結果発表を受けた「ジャカルタ暴動」について「不明点が多い」としながらも、選挙結果の正統性を否定する「制度外からの挑戦」や、SNS制限や別件逮捕などの「政権による強権的な取り締まり」が、「民主的手続きへの脅威、社会的安定へのネガティブ・インパクト」をもたらす可能性に注意を喚起した。
 質疑応答・全体討論では、宗教的アイデンティティーへの傾斜の中で、実質的な政策競争が広がり得るか、を記者が質問。川村氏は「政策的違いを候補者が出すことは難しい。政策をめぐって選挙が戦われる可能性は今後も低い」「イスラムの政治的有用性を政治家が確認。イスラム保守派も自分たちの行動が政治家の行動を変え得ることを認識してきている。イスラムの政治への影響力は、ますます強まっていく可能性が高い」との見通しを語った。(米元文秋、写真も)

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