「強制帰国」不当と提訴 広島 インドネシア人実習生
インドネシア人の技能実習生の候補者のリキ・アムルーラさん(26)=西ジャワ州インドラマユ県出身=が2018年2月に、実習前に講習を受けていた広島県内の監理団体から強制帰国をさせられたのは不当だとして、5月23日、監理団体などに賠償を求める訴えを広島地裁に起こした。
被告は「中亜国際協同組合」(広島市)と実習予定先のカキ養殖業「マルコ水産」(東広島市)。リキさんは、実習中の賃金相当額や慰謝料など700万円を求めている。
リキさんを担当する弁護士によると、リキさんは18年1月9日に日本に入国、監理団体で1カ月の講習を受け、2月8日から3年間、実習を予定していた。
しかし、リキさんの日本語の能力を理由に、監理団体から1月31日、翌日に帰国するように言い渡された。
当時、リキさんは監理団体から、日本語ができるようになったら再入国できると言われていた。ところが 帰国後、リキさんは18年3月に監理団体の幹部と面談した際、「あなたはブラックリストに載っているから、もう来られない」と言われた。さらに19年1月に再度面談した際は、「自分の意思で帰った」「問題が早く終わってほしい」「労働組合との関係は切ります」との内容の書面を書かされたという。
リキさんを支援する広島文教大学の岩下康子講師によると、実習生候補者は通常は3~4カ月は日本語を学ぶが、リキさんは「日本語ができなくていいから来てくれ」と監理団体から言われ、日本語を1カ月半ほど学び、渡航した。
「翌日帰国」を言い渡された日、リキさんは労働組合を交えて監理団体と交渉を行っていた。労組関係者が席を外した後、監理団体から帰国を告げられた。帰国まで外部との連絡手段を断たれていたという。
監理団体「中亜国際協同組合」の担当者は取材に、「訴状がなく、コメントできない」としながら、「本人の同意のもと、意思を尊重している。強制帰国という認識ではない」と説明。担当者は、インドネシアを訪れて「本人、親、送り出し機関を含めて面談し、本人が日本語に自信がないということもあり、辞退することになった。実施の意欲が本人になくなった時点で呼び戻すことはできない」と話した。
また担当者は、日本入国までの経緯について「(18年)4月に日本に来るまで5カ月あった。本人は1カ月半しか勉強していないと言っている」と話した。同監理団体ではこれまで、けがなどにより、実習生が帰国することはあったが、日本語能力を理由にした帰国は初めてとしている。(木許はるみ、米元文秋)