政府「98年5月に酷似」 22日暴動 暴徒射殺を計画か

 22日に中央ジャカルタの総選挙監督庁(バワスル)周辺で発生した暴動について、政府はスハルト政権崩壊の引き金となった1998年5月暴動と酷似し、暴徒射殺を計画していたとの見方を強めている。国家警察は27日、暴動に乗じて政府高官4人の暗殺を画策したとして、6人を逮捕したと発表した。一方で、人権団体は暴動鎮圧時の警察による暴力は人権侵害にあたると非難、事件究明を訴えている。
 国家警察は27日、銃器を不法所持していたとして、21~24日にかけ、首都圏各地で6人を逮捕したと発表した。主犯格のH容疑者は21日午後3時ごろ、中央ジャカルタのメガリアホテルのロビーで摘発。ある人物から1億5千万ルピアを受け取り、高官の暗殺を実行する予定だったとした。
 I容疑者は500万ルピアを受領し、同日午後8時ごろ、西ジャカルタ区クボンジュルックで逮捕。T容疑者は5500万ルピアを受領、西ジャワ州ボゴール県で逮捕し、尿検査で合成麻薬を使用していたことが分かった。北ジャカルタで逮捕したA容疑者は、手製銃器3丁をH容疑者に2650万ルピアで売却したと明らかにした。
 週刊誌テンポは、狙撃者による暴徒射殺が計画されていたと指摘。警察が暴動発生前に銃器不法所持容疑で逮捕した、プラボウォ氏の後輩にあたる元陸軍特殊部隊(コパスス)司令官、スナルコ氏(65)について詳報した。
 同氏はアチェ師団司令官やアチェの地方政党幹部を歴任。今回は、紛争当時、分離独立派武装組織自由アチェ運動(GAM)に関する情報を軍に提供してきた現地協力者に、ジャカルタへ銃器を運搬させたと指摘。国家情報庁(BIN)の元幹部ら軍人の署名を偽造し、検査を受けずに旅客機に持ち込んだが、スナルコ氏の手に届く前に、警察がスカルノハッタ空港で摘発した。
 ムルドコ大統領首席補佐官の見解として、今回の暴動は98年5月当時と酷似し、全国各地で同時多発した暴動発生から1週間後に退陣に追い込まれたスハルト政権末期のようなシナリオを想定していたと指摘。
 暴動の引き金として計画された今回の暴徒射殺では、総選挙監督庁から1キロ以内のビルに2人の狙撃者を配置し、同庁前の暴徒に向けて発砲する予定だったが、銃器摘発やスナルコ氏逮捕を受けて中止されたと伝えた。
 国家警察は、プラボウォ支持者から「殉死者」を出し、治安部隊へ国民の怒りの矛先を向けることを画策した勢力がいると指摘。また機動隊宿舎を襲撃し、武器調達を狙ったほか、機動隊の車両の中に実弾を置いて周辺にばらまくなど、「イスラム教徒射殺」を裏付ける秘密工作をしたとの見方を強めている。

■「暴動関与の自白強要」
 一方、暴動鎮圧時の暴力は人権侵害にあたるとの批判を受け、国家警察は27日、国家人権委員会や人権団体「スタラ」などと協力し、「22日暴動調査班」を設置するとの考えを表明した。
 法律擁護協会財団(YLBHI)やコントラス、アムネスティなど複数の人権団体の調査によると、暴動で死亡したのは8人で、このうち4人が首や胸部などに被弾したことが確認された。警察はいずれも警察の銃器ではないが、検視の結果、1人は実弾が命中して死亡したと発表。ムルドコ大統領首席補佐官は、米国製小型ライフル「M4」の銃弾と指摘している。
 残り4人の死因は特定されておらず、うち1人の身元は不明。また、暴徒として摘発された未成年者52人は現在、国家子ども保護委員会(KPAI)の施設に保護されている。人権団体は「周辺にいた住民の誤認逮捕も多発し、暴動関与の自白を強要されている」と警察の捜査を批判した。(蓜島克彦)

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