抗議の若者拘束、袋だたき 首都、夜通し衝突 治安部隊が発砲

 「死ね」「このうそつき野郎」。大統領選の「不正集計」抗議デモに参加した若者らが拘束されるたび、治安部隊の隊員らが大声で罵りながら飛び掛かり、取り囲んで警棒で殴打、蹴り上げ、踏みつける。漂う催涙ガス、自動小銃の威嚇発砲。総選挙委員会(KPU)が現職ジョコ・ウィドド(ジョコウィ)大統領勝利の集計結果を発表を受け、中央ジャカルタで21日深夜から始まった、デモ参加者と治安部隊の衝突は22日早朝まで夜通し続き、「数人の死者と数百人の負傷者」(日本大使館まとめ)を出す事態に発展した。 

 サリナデパート前の総選挙監督庁周辺に集まった抗議の群衆の強制排除が始まったのは21日午後11時前。警察機動隊の指揮車のスピーカーが「解散しなさい」と叫ぶと、大盾を構えた隊員が突進。歩道にいた男性を組み伏せ、袋だたきにする。その様子を撮影しようとした記者を、隊員が指さし「カメラ」と叫び、突っ掛かってきた。
 ワヒドハシム通りを東へ進んだ機動隊は、行く手の群衆に向かって催涙弾を次々と発砲、爆発音とオレンジ色の火柱が上がり、街にガスが充満する。目とのどが焼けるように痛い。記者は道端の人からペットボトルの水をもらい、目を洗ってもしばらく涙が止まらなかった。
 ふだんなら屋台でにぎわう通称サバン通り付近を、ガス弾のオレンジ色の光跡が突っ切る。後詰めにいた自動小銃を持った部隊が前列に出て、一斉に威嚇発砲。ひるんだ群衆を隊員が追い回し、周辺のホテルや路地にも突入した。
 私服の治安要員が、若者たちを次々に引き立ててくる。血が付いた白いズボンに上半身裸の男性に、数人の大柄な機動隊員が喚声を上げて殴り掛かり、倒れてぐったりした後も踏み続けた。指揮官が「やめろ」と言うが、やめない。暴行に加わっていない隊員も「ばか」などとはやし立てる。
 この場面をスマホで撮影していた男性を機動隊員が「消せ」と怒鳴りつけた。不用意に写真を撮ると、誰彼なく襲い掛かりそうな気迫がにじむ。
 「前進せよ」。タナアバン地区へ、全身に防具を着けた陸軍の部隊が行進する。前衛の機動隊の盾の前では花火のような物の爆発が続いた。道端のごみ置き場から煙が上がり、焦げた車のタイヤが臭う。催涙弾の薬莢やこぶしより大きな石やコンクリート片が道に散乱していた。
 サリナ付近に戻ると夜明け前だった。「前線」から戻った機動隊員らがサフール(一日の断食入り前の食事)の紙箱を受け取り、同僚と談笑、さっきまでの殺気が消えていた。東カリマンタン州から派遣された機動隊員(42)が「きょうにはきょうの任務がある」と表情を引き締めた。(米元文秋、木許はるみ)

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