【素顔のFPI】(上)「ネットで真実知った」  売春まん延に怒り 元「酒飲み」の活動家

 イスラム擁護戦線(FPI)。インドネシア各地で飲食店街に乱入し、ビール瓶をたたき割るといった行動で注目されるだけだったこの強硬派団体は今や、「反イスラム」とみなすものを許容しない社会のムードをけん引、今回の大統領選などで、ジョコ・ウィドド(通称ジョコウィ)政権側に反対し、野党大統領候補プラボウォ陣営を支援する社会運動の前面に躍り出た。インターネットによる情報拡散を武器に、白い戦闘服で行動する男たちの素顔に迫る。

 中央ジャカルタ・プタンブラン、小さな住宅が密集する下町の路地裏にFPIの拠点はある。改築中の本部の脇を通り、小道に入ると「イスラム防衛隊総司令部事務局」といった看板や、剣を交差させた紋章。「教師」たちの宿舎もある。
 「強硬派」というと、恐ろしげな印象だが、手の空いているFPI活動家とは、道端に座ってくつろいだ話ができる。
 ふだんは運転手をしているヘンドラさん(39)もその一人。南スラウェシ州マカッサル出身だ。「昔は酒飲みだった」が、10年前にFPIに加盟したと言う。「イスラムの教えを正しく実現していこうとする信念に共感したからだ」

■格差社会に批判
 インドネシアの現状で最も憂慮しているのは「売春のまん延」だと言う。
 「売春は、女性に敬意を払わず、人身売買の対象とする行為だ。ジャカルタでは非常に多く行われており、ほぼ全インドネシアにはびこっている。低年齢化も目立つ。不特定多数の人と性行為をして、だれが父親だか分からなくなるような事態は、宗教が禁じている。日本だって同じだろう」
 「背景には経済的な不平等がある。身を売らざるを得ない人たちがいる」と格差社会を批判する。
 FPIが風俗店や酒場への襲撃を行ってきたことを問うと、「われわれはまず、法律違反の事実を警察に告知する。警察が動かないときは、FPIが住民と共に行動する」と説明した。
 こうした直接行動は、乱闘や破壊行為を伴うこともあり、眉をひそめる人もいる。ヘンドラさんも「以前はFPIに拒絶反応を示す人もいた」と認める。

■212集会で変わった
 「しかし状況は変わった。212のときから、メンバーがぐっと増えた」
 「212」とは、2016年12月2日に、バスキ・チャハヤ・プルナマ(通称アホック)ジャカルタ特別州知事(当時)の「イスラム教冒涜(ぼうとく)発言」を批判して開かれた大集会だ。
 白装束のFPIが随所で目立ったこの集会は、社会のムードの分岐点となり、ジョコウィ大統領直系で華人キリスト教徒のアホック氏は17年の知事選で落選、その後投獄された。
 冒涜とされたのは、住民との対話集会での「アルマイダ51(コーランの一節)でだまされていると、皆さんは私に投票できない」との発言。ユーチューブなどで拡散され、炎上した。
 ヘンドラさんは「知事として、住民の多数派であるイスラム教徒に対し、礼を失してはならない。あのようなどきつく、汚い発言は許されない」と憤る。

■報道は信用できない
 「(中部ジャワ州)ソロ市長時代のジョコウィに、私は好感を持っていた。テレビばっかり見て、仕事ができる人だと誤解していたから。テレビ局は大方ジョコウィ支持者が所有しているので、報道は信用できない。インターネットに真実がある。大統領選も同じだ。不正の事実をネットでフィラルカン(拡散)する」
 ジョコウィ大統領の「不誠実」を非難する言葉が続くので、「では、野党の大統領候補プラボウォ氏は誠実なのか」と聞くと、ヘンドラさんの答えは意外に冷めたものだった。「プラボウォ氏は、まだ大統領の仕事をする機会を与えられていない。やらせてみて、公約を守らなければ、やめさせるだけだ」(つづく)(米元文秋、写真も)

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