インドネシアに熱視線 総合格闘技ONE 若者熱狂、アジアで急進
「倒せ! 決めろ!」。満員になった室内競技場イストラスナヤンに、熱狂した若者の歓声が響く。アジアで急成長する総合格闘技「ONEチャンピオンシップ」が3日、中央ジャカルタで開催され、インドネシアから7選手が参加した。2012年から年2回のペースで興行が行われており、ファンを増やしている。
ONEはシンガポールに本拠を置く総合格闘技団体。2011年に初大会を開催し、同国政府系投資ファンド、テマセク・ホールディングスや、米有力ベンチャーキャピタル、セコイアキャピタルから出資を受け急成長してきた。現在世界約140カ国・地域で、スマートフォン向け公式アプリ、テレビ、ソーシャルメディアなどで配信され、視聴可能人数は26億人に達する。日本では3月31日、東京・両国国技館で初大会が開かれ注目度が上昇、今回は4選手が参加した。
日本法人の秦アンディ英之社長は躍進の背景について、アジアのスポーツビジネスの高い潜在需要▽各地の格闘技が集い、争う明確なコンセプト▽ファンに後押しされる地元ヒーローの輩出▽高いモバイル端末の普及率——を挙げる。視聴者の7~8割をミレニアル世代が占めるという。
若年層人口の多いインドネシアでもファンを獲得する一方、まだ国民的支持を受ける「ヒーロー」が誕生しておらず、フィリピンやマレーシアなど他国と比べ盛り上がり切れていない。国内では暴力的な映像に対する規制が厳しいこともハードルの一つだ。
秦社長は「ONEはあくまでスポーツとして格闘技を位置づけ、武道の精神を重視している」と語る。総合格闘技の五輪競技入りを目指す国際団体ともパートナーシップ結んでおり、自国開催に名乗りを挙げるインドネシアの重要性は高いと指摘する。
今回は他のスポーツの試合と被らないよう、金曜に初開催し、リングも金網ではなくよりスポーティーなロープとした。開始直後こそ観客はまばらだったが、インドネシアの注目選手が出場する頃にはほぼ満席となり、一定の成功を収めた様子。ことし10月ごろにもジャカルタで開催される予定だ。(大野航太郎、写真も)