「不正許すわけには」 寝る間惜しみ50時間超作業 選挙委員過労死

 17日に同時開催された大統領選・総選挙で投開票にあたった作業員が大勢過労死した問題。東ジャカルタ区マトラマン郡の投票所で責任者を務めた男性は、「自分の投票所で不正やミスを許すわけにいかない」と寝る間や食事も惜しんで累計50時間以上働いた末、投票日の5日後に亡くなった。遺族は「政府は同時選挙による弊害をきちんと考えなかった」と憤りや無念さをにじませる。

 マトラマン郡の警備会社勤務、ルディ・ムリア・プラボウォさん(57)が投票運営委員会(KPPS)の委員を務めるのは三度目。9人いる委員を束ねる責任者になったのは今回が初めてだった。「大事なことには責任を全うする人だから、手を抜かなかった」。一人娘のイネスさん(22)は選挙立会人を務め、父親の働きぶりを間近で見ていた。
 投票所の準備が始まったのは15日夕方。設営作業は16日深夜まで続いた。ルディさんは疲れていても歌を歌って場を盛り上げるなど気丈にふるまっていたという。
 迎えた17日。午前7時~午後1時の投票に立ち会った後は、昼食を取るわずかな時間も投票箱を自分の足元に置き、目を離さなかった。有権者286人分、大統領や議会選挙の4種類の投票用紙を1枚ずつ開票し、ルディさんが読み上げていく。オレンジ色のビニールシートで覆われた投票所は暑く、ルディさんは時折ふらついた。
 全て開票が終わったのは翌18日午前3時前。その間、「ごはんを食べて」と心配するイネスさんをよそに、ルディさんは「終わるまで休めない」と夕食も夜食も取らなかった。投票箱を役場に届けたり投票所を解体したりと朝まで働き、帰宅したのは午前10時。妻のスカイシさん(58)は「ようやく寝られたのに、午後1時には集計用紙へのサインを求める人がやってきて、起きてしまった」と振り返る。
 家族思いで、近所に住む89歳の実母の介護にも積極的だった。疲れているはずなのに、19日にも、いつものように母を訪ね、車いすでの移動や食事の手伝いをしたという。1歳になる初孫を溺愛し、亡くなる直前にも添い寝していた。
 体調が急変したのは22日朝。頭が痛いといって薬を飲んだ後、2回嘔吐し、そのまま帰らぬ人になった。「健康診断を受けたばかりで、病歴もなかったのにどうして」。過労による心臓発作が死因だと言われたが「突然のことでよくわからない」とスカイシさんは呆然とした様子で話した。
 遺族は選挙制度の見直しを望んでいる。「選挙で命を落とすのは私の夫だけで十分。同じ被害を繰り返さないでほしい」とスカイシさん。イネスさんは「政府は費用削減のためと言って、同時選挙による弊害をきちんと考えなかった」と憤る。ルディさんの仕事に払われた報酬は52万ルピア。「52万ルピアを返すから、お父さんを返してほしい」と吐露した。(木村綾、写真も)

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