社会分断は一層深化 本名純教授 選挙結果受け講演

 インドネシア政治を研究する本名純・立命館大学国際関係学部教授はこのほど、東京都内で開かれた日本インドネシア協会(会長・福田康夫)主催の講演会で、大統領選挙について「社会の分断化をより深化させた選挙」との見方を示した。民主主義が選挙運営という形式の上では定着したものの、SNSがかえってそれを後退させる影響を持ち始めたとの分析を示した。

 同教授は投票日当日にジョコ・ウィドド(通称ジョコウィ)裏選対陣営に詰めていたエピソードも交えながら選挙を振り返った。クイックカウントによる州別の両候補の得票率を2014年選挙時結果と比較すると、両派支持の割れ方はより顕著となっており、1955年選挙時の分裂状態と似ていると述べた。ジョコウィ支持はジャワ心臓部である中部ジャワ、国内最大のイスラム社会団体、ナフダトゥール・ウラマ(NU)基盤の東ジャワ・ジョクジャカルタ、外島の非イスラム勢力圏で強く、プラボウォ支持はジャワ西部の保守イラム層社会と外島のイスラム勢力圏で強かったことが鮮明となったと説明した。
 有権者1億9千万人による世界最大の直接民主選挙について、混乱がなく平和裏に実施された点で民主主義は定着したと評価した。一方、フェイク・ニュースや陰謀論も大量拡散され、SNSの負の側面が明らかとなっているとして、言論の自由が促進されるほど穏健な思想が広がると言われてきた政治学の定説を見直す必要があるとした。
 また、ジョコウィ政権の2期目に向けては「選挙戦でNUは資金の面で相当支援した。今後、(副大統領候補の)マアルフを介してジョコウィに『恩返し』を求めていくだろう」と指摘。民主的といわれた大統領選挙の舞台裏についても言及した。
 企業関係者からの日本を含む外交への影響を問う質問に対しては、「インド・パシフィックという考え方は東南アジア諸国連合(ASEAN)全体を通して引き続き共有していくビジョンであり、2期目以降も変わりはないだろう」とした。ただ、日本、中国、米国などへの対応についての具体的展望には触れなかった。
 選挙後の今月25日、ユスフ・カラ副大統領は中国の一帯一路・第2回国際会議に出席し、インドネシアの積極的な関与を表明していた。出席した企業関係者からは第2期政権の外交姿勢に懸念の声も出ていた。(斉藤麻侑子、写真も)

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