【連載ルポ「ごみ山」】(上)最終処分場、限界は間近 ブカシ市 液体、悪臭、たかるハエ
西ジャワ州ブカシ市は、ジャカルタ特別州とブカシ市からごみが運ばれる最終処分場の集積地だ。同特別州から1日7500トンを受け入れる中、地元のごみを処分する「TPAスムルバトゥ」は、容量間近に達し、限界を迎えつつある。
ジャカルタ中心部から約40キロ。最終処分場のごみ山は、ワルン(屋台)や簡易な家々が並ぶ集落のすぐ近くにあった。さらに進むと、道がごみ山を縫うように、四方八方が山に囲まれた。約15分ほど走り、TPAスムルバトゥに到着した。
この処分場には、ブカシ市から毎日400~800トンのごみが運ばれる。敷地面積は約20ヘクタール。ジャカルタ特別州からごみを運ぶ処分場「TPA バンタルグバン」やブカシ県の最終処理場の近くに位置する。
ごみ山の高さの上限は20~25メートル。2002年にブカシ市が運営を始めたが、敷地内の6カ所の区画のうち1カ所の区画を除き、すでに容量の上限に達している。同市は17~18年、3・5ヘクタールを追加購入したが、ことし中に満杯になると報道されている。
同市の元市議の男性(54)によると、追加購入した土地は、17年以前から、ごみが投棄されていたという。
ごみを搬出するトラックは毎日午前8時~午後9時に約250台が訪れる。トラックは、たった1カ所にごみを搬出するため、長い列をなしている。
市職員に案内され、現場を歩いた。ごみ山は地層のようにごみが重なり、木の根っこがむき出しになるように、ごみが地層の間から無数に枝垂れていた。野菜の茎、赤や黒のレジ袋、菓子の個包装、ブンクス(持ち帰り容器)、金属の大きなバケツ、トタン板、灰色の砂、シャンプーのケース……、ごみの種類を見ていると、切りがなかった。
黒ずんだ山肌からは、湧き水のようにごみの汁が滴ったり、わずかに白い煙が立ったりしていた。ハエが1センチ四方に1匹はたかっているように見えた。悪臭とともに、すぐに頭が痛くなった。
道路には黒い水溜まりとごみが散乱。道幅は、6トントラックがやっとすれ違えるほどの狭さだった。ごみ山に気をとられていると、突然、左足がとられ、生暖かい液体と粒々した固形物が長靴に入ってきた。側溝に足を取られたのだ。毒物や割れ物の破片が入っていても、おかしくないと思い、落ち着かないまま、見学を続けた。
ごみの搬出場には、特別な施設はなく、ショベルカーでごみを上段へ積んでいく。ごみ山の高さはすでに20メートル近くに見える。数メートルずつ段になり、トラックからごみを搬入しては、ショベルカーがリレーのように上段へごみを運んでいた。
ごみ山では16年の報道によると、少なくとも3回、地滑りが起き、労働者が生き埋めになったり、亡くなったりしている。前出の市議は取材に、報道に出ていない事故がたくさんあるとし、詳細な情報を聞くと、口をつぐんだ。
狭い道でトラックを避けながら、ごみ山の光景に圧倒されていた。すると、案内役の職員から「上に登ろう」と思ってもみない提案を受けた。(木許はるみ、写真も)(つづく)