仮設居住者が自殺 中部スラウェシ震災半年 親族失い、不安抱え

 昨年9月の中部スラウェシ震災から28日で半年がたった。政府からの支援金支給や生計回復への道筋が具体的に示されない中、大規模な液状化現象被害があったパル市ペトボの仮設住宅で生活する24歳の被災者が、26日に自殺した。市外で出稼ぎをしている父親は「震災で親族が犠牲になり、今後の不安を抱えていたのだと思う。無念でならない」と言葉をのんだ。地元紙記者は「仮設に住む被災者の自殺は初めて聞く」と話している。

 自殺したのはペトボ東部の仮設集合住宅に兄と2人で入居していたテサル・ラフマットさん(24)。親族の子どもの面倒をよく見て、人と接することが好きないい子だった。体も強く、警察官になることを夢見ていたが、2017年に受けた試験で落とされ、溶接工として働いていた。
 8年前に他界した母の代わりに心のよりどころとなっていた、近くに住む祖母と叔母が、震災で泥にのまれた。今も見つかっていない。震災後は仕事がなく「申し訳ない」と、交際していた、医療関係で働く女性と1カ月前に別れた。
 父のジョニ・ユノスさん(53)は「人のせいにしない、立派ないい子だった」と涙する。震災で家業のケータリングができなくなったジョニさんは年初から、ポソ県北ロレ郡ドンギドンギの農園に出稼ぎに行き、毎週土曜に仮設住宅か近くの親戚の家に戻る生活をしていたため、自殺があったときはペトボにいなかった。
 ちょうどポソで知人が土地を譲ってくれる話があり、農園や養鶏場を開くための資金稼ぎに精を出していた最中で、テサルさんとポソに引っ越し、一緒に耕作を手伝う約束もしていた。「もう少しだった。今まで食べさせられなくてごめん」と声を震わせた。
 テサルさんは25日夕、姿が見えなくなり、親戚や知人が探したが見つからなかった。26日午前9時半頃、仮設住宅近くの特別支援学校の教室で首を吊った状態で見つかった。父の意向で司法解剖はせず、埋葬された。

■遅れる復興事業

 震災から半年がたったが、自治体は復興事業に取りかかれていない。復旧から復興期間への移行は、当初の18年12月末から2度延期され、今月末になる見通し。家の損壊状況によって支給される支援金も、損壊度合いの調査に時間がかかっており、未だ実現していない。
 関係筋によると、津波や液状化などの災害リスクに基づいた自然災害危険区域(ZRB)の、住民への周知は未実施。復興基本計画に基づく空間計画はほぼ完成したが、インフラ事業の本格着工は20年になるとの見方を示した。
 中部スラウェシ州は復興期間を2年間としているが、長期化は避けられない状況。仮設住宅でもなく、パル市バラロアに外国が支援したテントに暮らす2児の母は「当初2カ月とされていたテント暮らしも半年。もうここに住宅を建ててほしい」と、復興に関する情報が届かない現状を嘆いた。ペトボでは今月になって禁止区域の境を示す杭が打ち込まれた。
 中部スラウェシ州政府発表によると、15日までに中央政府が建設した仮設集合住宅575棟(6900世帯分)、非政府組織(NGO)による仮設住宅3986戸が完成したが、必要とされる2万2676世帯分のやっと半数近くに達したばかり。
 震災は18年9月28日に発生。地震のマグニチュードは7・4。地滑りによる津波が発生し、内陸では大規模な液状化が発生。泥に2階建ての家が埋まるなど世界でも例を見ない現象が起きた。死者・行方不明者数は3500人超。(中島昭浩、写真も)

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