【MRT特集】安全への意識徹底して 日本コンサルタンツ  鉄道人材を育成

 運転士や駅員、指令員、車両などのメンテナンススタッフ……。ハード面からソフト面までを含めたパッケージ型インフラ輸出である大量高速鉄道(MRT)では、こうした運行現場で働く人材の育成も日本企業が支援してきた。開業に向けて、運転士らを一人前に育て上げるためサポートをしてきた関係者に話を聞いた。
 開業支援をしてきたのは、JR東日本グループ会社の日本コンサルタンツを幹事社とする4社の共同企業体。2016年から、現場スタッフの教育訓練のほか鉄道会社としての運営・維持管理体制の構築などで、MRTを運営する州営MRTジャカルタ(MRTJ)を支援してきた。 
 運転士の指導を日本側から担当したのは、日本コンサルタンツの山口徹さん。山口さんは、車掌や運行システムの開発など鉄道運輸事業に約30年間携わってきた経験を持つ。
 運転士の総数は71人で、うち17人は国鉄(KAI)などで現場経験があるため指導員として育成、その指導員たちが残りの大半を占める東ジャワ州マディウン県にある鉄道専門学校「アピ・マディウン」などを卒業した若者の指導に当たった。

■マレーシアで訓練
 教育訓練が最初に始まったのは、マレーシアだ。MRTJはマレーシアの交通インフラ事業会社のプラサラナと協力し、2017年4月から10人ずつ派遣して1カ月間の研修を続けてきた。MRTのシステムに近いというプラサラナが運営する次世代交通システム(LRT)の本線上での走行訓練も行っている。
 このマレーシアでの研修が終了した指導員から、国内で座学研修を開始。MRTの車両は、自動列車運転装置(ATO)で運転するため、運転士が本線上で行うことは、発車ボタン、ドアを締めるボタンを押すことで、プラットホームへの停止やドアを開けるのはATOがやってくれる。山口さんはまず、車両の機械操作説明、安全管理、安全衛生などについて教えた。
 その後、車両基地での車両の入れ替えの訓練を経て、18年末、ついに車両基地を出て本線上での走行訓練を始めた。安全を確認しながら機械を操作すること、時間通りに動かすこと、万が一故障してATOが使えない時のために25キロ以下の速度でマニュアル運転ができるようにも訓練している。不用意に線路内に立ち入った人がいた場合にはただちに停止することも徹底して指示してきた。

■右よし、左よし
 運転士たちは発車前に「カナンアマン、キリアマン、デパンアマン(右よし、左よし、前よし)」と言って、周囲の安全確認をする。山口さんは「運転士に一番必要な、安全に対する意識をきちんと持ってもらうことを大切に指導をしてきた」と振り返る。
 こうして訓練を重ねてきた運転士の指導員は15往復、一般の運転士は21往復を最低でもこなしてから、現場に出ている。
 運転士以外の駅員や車両や電気、信号・通信などのメンテナンススタッフは、日本のさまざまな鉄道事業者で教育訓練を行った。
 駅員総数97人は、管理駅とするホテルインドネシア前ロータリー駅、ブロックM駅、ルバックブルス駅3駅に駅長と副駅長、ほかは駅マネジャーを長として配置する。駅員のほとんどは鉄道未経験だ。

■甲子園研修も 
 18年には、駅長3人と駅員5人の計8人が横浜市営地下鉄で研修、朝の点呼から自動券売機の金の取り込み、改札窓口の仕事、忘れ物管理、駅の開け閉め作業など、一日の流れを見学した。さらに駅長の3人は、混雑する駅のさばき具合が鉄道ファンから「神業」とも言われている甲子園球場近くの阪神電鉄の甲子園駅で、阪神タイガースの試合がある日の実際の駅を見学した。
 運行によって生まれた新雇用はおよそ300人。日本コンサルタンツを幹事社とする共同企業体は、開業後6カ月間支援を続けていくが、その後は彼らが「自立」をしなければならない。 (上村夏美)

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