日本人弁護士5人が活動 インドネシアで業務展開 日本の大手法律事務所

 高成長を続ける経済への注目が高まり、日系企業の新規参入や事業拡大が進むインドネシアで、日本の大手法律事務所も業務展開に乗り出している。進出企業の増加に伴い、進出手続きや現地パートナーとの関係など、日系企業の法律にまつわる悩みも増加する中、ジャカルタにおける提携先の法律事務所などで企業の相談に乗っている日本人弁護士の五人が一堂に会し十六日、国際協力機構(JICA)国家警察改革支援プログラムのマネジャーを務める山崎裕人専門家(日本警察庁警視監)の紹介で、じゃかるた新聞の事務所を来訪した。

 来訪したのは、平石努さん(四七、ジャカルタ国際法律事務所勤務)、吉本祐介さん(三五、西村あさひ法律事務所派遣)、福井信雄さん(三四、長島・大野・常松法律事務所派遣)、田中光江さん(三六、森・濱田松本法律事務所派遣)、松本拓さん(三十、アンダーソン・毛利・友常法律事務所派遣)。うち、平石さんは、司法改革分野のJICA専門家として二〇〇三?〇四年にインドネシアで勤務した経験があり、今年一月からジャカルタの法律事務所で勤務を開始。ほかの四人は、この一、二年以内に日本の四大法律事務所からそれぞれの提携先などに派遣されている若手弁護士だ。
 インドネシアの法曹界の現状について尋ねると、「法律と実務のかい離が大きい」と口をそろえる。平石さんは「資本を払っていなくても株券を持つのは矛盾しているにもかかわらず、会社設立と資本金の払込の順序が逆になることが認められることがある」と例を挙げる。田中さんは「役所に問い合わせをすると、人によって回答が異なったり、同じ人でも『以前の回答は間違っていた』と解釈が変わることがある」と苦笑い。恣意(しい)的な法解釈が、司法の確実性を妨げていると説明する。
 福井さんは「二〇〇〇年代に投資関連法が整備されてきた。その一方で民法などのいわゆる六法はまったくアップデートされておらず、紛争が起きたときに問題が広がる可能性がある」と指摘。実際、企業からは「裁判所に行っても解決しないので、泣き寝入りするしかない」とあきらめの声も聞かれるという。
 アジアでの日本人弁護士の活動は、日本の企業進出が先行した中国で一九九〇年代に始まり、東南アジアではここ二、三年で本格化した。「ベトナム・ホーチミンに弁護士を派遣したら、予想以上にニーズがあることが分かった」(吉本さん)という。
 主な業務は、インドネシア人弁護士との間に立ち、インドネシア事業に絡む法律上の手続きなどで、企業をサポートすること。汚職の問題は、徐々に改善されつつあるが、裁判所ですら「袖の下」の習慣があるなど、思わぬ障壁に直面することもしばしばという。
 しかし、松本さんが「文化や言葉、考え方が違うインドネシアで日本の企業が法律のトラブルがあったときに、現地の人と協力して少しずつひもといていくことで解決の道筋が見えてくる。ここでは事務所内の唯一の日本人なので、自分で責任を持ってやることにやりがいを感じる」と言うように、著しい発展を続ける国での仕事は、難しい環境ながらも、大きな充実感も生むようだ。

社会 の最新記事

関連記事

本日の紙面

JJC

人気連載

天皇皇后両陛下インドネシアご訪問NEW

ぶらり  インドネシアNEW

有料版PDFNEW

「探訪」

トップ インタビュー

モナスにそよぐ風

今日は心の日曜日

インドネシア人記者の目

HALO-HALOフィリピン

別刷り特集

忘れ得ぬ人々

スナン・スナン

お知らせ

JJC理事会

修郎先生の事件簿

これで納得税務相談

不思議インドネシア

おすすめ観光情報

為替経済Weekly