【インドネシア人実習生のホンネ in 気仙沼 ㊦】 待遇改善へ腰上げる 特定技能新設にらみ 受け入れ側、人材流出懸念

 技能実習制度の適正な運用と実習生の保護を担う厚生労働省と法務省の認可法人外国人技能実習機構(OTIT)によれば、実習生の賃金は日本人と同等以上、各自治体の最低賃金以上と規定されている。このため現状の待遇は問題とはならないが、在留資格「特定技能」の4月新設で、他の職場に人材が流出する前に、宮城県の監理団体気仙沼市製氷冷凍業協同組合は、今まで以上の待遇改善へと腰を上げようとしている。

 同組合副理事長の大島忠俊さんは、市内の人手不足について「ご多分にもれず、復興とともに人手不足」と説明。(最低賃金が)時給700円前後だったころ、秋の最盛期に同千円の募集を出したが応募が来なかった。今になって60~65歳世代のリタイアや親の介護が理由の退職が重なっているという。
 実習生は「欠かせない、なくてはならない制度」と、外国人材の受け入れは今後も拡大方針。若い労働力が減少し、高齢化が進む中で「海産物の輸出入だけでなく、人材ももっともっと交流すべきだ」と考える。社長を務める二印大島水産では、実習生の雇用率を現状の3割から5割まで高める方針だ。
 実習生受け入れのメリットについては「日本人に負担がかからなくなると日本人の出勤率が良くなる好循環がある」と指摘。数が増えるに連れ、作業シフトも安定した。
 実習生との交流は、年2回の歓送迎会でカラオケパーティーを催したり、半休の日にカラオケ費用を負担したりと工夫を重ねる。同じ組合内の実習生用アパート間であれば、許可を得て寝泊りもできる。ことしのラマダン(断食月)やレバラン(断食月明け大祭)では、ホールを借りて合同礼拝を実施する予定。
 実際の雇用契約は、受け入れ企業と当事者の間で結ばれるため、実習生の待遇改善は企業努力によるところが大きい。実習生自身が人手不足の職場で働き、自分たちなしには現場が回らないと理解していることを認識し、今後の対応を考えることが求められる。
 大島さんは、実習を終え帰国した後、再び日本に戻って働きたいと話す実習生のためにも、「なるべく気仙沼に戻って来てもらえるような職場環境や賃金体系にしないと。地方に住むことやできる職種を考えると色々とやるべきことがあるのではないか」と企業努力を継続する姿勢を示した。
 実質的に労働者向けの在留資格となる特定技能は、14の産業分野が対象。実習制度対象の分野に、新たに宿泊や外食、航空などが加わった。実習制度での転職は原則認められていないが、日本の法務省入国管理局によると、特定技能では、資格を取得した産業分野内であれば転職に制限は現時点でない。
 東ジャワ州から来て1年未満の女性実習生は「水産加工場で働いているだけでは日本の仕事の仕方を全て学べるわけではないし、実習生の3年間が終わったら、できれば今度は転職できる特定技能で入国し、もっと今後につながる場所で仕事がしたい」と話す。例えば通訳として日本で経験を積むなど、帰国後も継続できる職種で働きたいと夢を語った。(中島昭浩、写真も)(おわり)

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