【インドネシア人 実習生のホンネ in 気仙沼 (中)】 「残業が減ってしまう」 実習生増加を心配 週6勤で唯一の稼ぎ時

 宮城県気仙沼市のインドネシア人技能実習生に話を聞くと、そのほとんどが原則として週6日勤務、基本月給は約14万円だが、家賃や渡航前訓練の借金返済などを差し引くと、自由に使えるお金は3万円程度にとどまる。将来に備え、貯蓄を増やすためには、残業するしかない現実がある。一方で市内の約半数の実習生を受け入れる気仙沼市製氷冷凍業協同組合は5月に実習生二十数人を増員し、今後も受け入れ拡大の予定だ。現在いる実習生は残業が減ることを心配している。

 社会保険料や家賃、水道光熱費、市民税など約5万円を引くと、手取りは9~10万円。その半分は渡航前訓練の借金返済や家族への仕送りに当てられ、さらに食費が1~2万円かかるので、残りは約3万円という計算だ。
 実習生として働くためには、インドネシア国内で日本語などの試験や軍隊式の3カ月の訓練を通過しなければならず、親戚や業者からその費用5千万~6千万ルピアを借金し、約1年間を費やして実習生となる準備をする。
 その後、日本の受け入れ側との面接を通過して初めて実習生として来日。当初は県最低賃金の時給798円。年次が上がると十数~30円程度時給が上がるが、実習生は原則3年間、転職も一時帰国もできない。家族第一のインドネシア人は、家族を心配させないようにと、嫌なことがあっても胸の中に留めることが多い。
 「だから私たちは一生懸命頑張らないといけない。1年目で借金を返して、2年目から将来の貯金につなげるためにも。故郷に帰ったら家を建てたり、店や事業を立ち上げたりしたい。もちろん結婚も」と話す、ある実習生の女性の口調には鬼気迫るものがあった。
 自由に使える月3万円ほどから、貯金に回すには、日々の節約も大切。別の実習生の男性は「日本では100円で自動販売機で飲み物も買えないが、故郷で1万ルピアあれば1日の食事代になる」と物価の違いにも苦労する。
 実習生らは、数カ所のアパートで1部屋2~4人の集団生活を送っている。記者が入手したある受け入れ企業の雇用契約書によると、月の家賃は一律1万5千円、光熱費同1万円が引かれているが、実習生たちは詳細を知らないという。同じ男性は「日本人は1人1部屋だが私たちより家賃が安いと聞いた」と不満が口をついた。
 市内のある水産加工場では60歳以上の年配工場員がほとんど。4年目の女性は「重いものを持ち上げる作業をさせるのは見てられないでしょ。だから私たちが代わる。実習生の方が作業を多くこなす場合もあるのに、日本人との待遇の違いはなぜ。実習生がいなければ回らない仕事もあるのに」。仕事では年配者よりも頑張っていると自負しているだけに、待遇も伴ってほしいと願っている。
 適切に実習が実施されているかを確認し、相談窓口にもなる監督団体に待遇への要望を伝えても「検討します」との答えが返ってくるだけ。「実習生が下に見られていると感じるし、監理団体の人が実習生より高い給与をもらっている。尊重すべき対象が逆ではないのか」と顔を曇らせた。(中島昭浩、写真も)(つづく)

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