【インドネシア人実習生のホンネ in 気仙沼】(上) 「経験積むため」は建前 指示通り模範回答 実際は「稼ぐため」

 東日本大震災後、他の地方都市よりも人手不足や少子高齢化の問題が重くのしかっている宮城県気仙沼市には現在、300人超の外国人技能実習生が暮らす。日本に来た目的を尋ねると最初は「日本での勤務経験を積むため」と、制度の方針に沿った回答をするが、インドネシア実習生への取材で、渡航前に送り出し機関からそう答えるよう指示された模範回答のケースがあることが分かった。実際の目的を「家族や自分のためにお金を稼ぐため」と話す実習生が目立った。

 市内の実習生全体の約半数に当たる152人(3月現在)のインドネシア人を受け入れる優良監理団体、気仙沼市製氷冷凍業協同組合のインドネシア人実習生を中心に、水産加工場に勤める16人から11~15日、話を聞いた。いずれも20代で、男性2人、女性14人。出身は東ジャワ、西ジャワ、中部ジャワが多勢で、南スマトラ州1人。
 組合加盟6社のうちの一つで男性7人、女性8人の計15人を受け入れる二印大島水産(本社・同市百目木)。主力商品ネギトロの製造工程に入って3年になるジュナンタ・トリストリスノさん(23)は「日本人の勤勉な姿勢が好きで、就業時間をきちんと守ることなど仕事とはどういうことかを学んだ」と実習の成果に胸を張る。
 2017年11月に施行された、3年の実習後に2年間の延長が可能な技能実習3号の枠で4年目を迎えるディタ・メトリアニさん(27)は、冷凍製品の出荷を担い、日本語での会話もお手の物。日本語で在庫管理表も作成し、「みんな優しく職場環境が好きだから戻ってきた」と明るい。
 一方で、別の水産加工場の実習1年目の女性は「日本に来たが、帰国後の開業資金は貯まりそうにない」と、聞いていた待遇と現実の差を嘆く。実習制度ではアルバイトもできないが、「日本に来てから知らされた。転職できる韓国にすれば良かった」。さらに、勤務地を日本に来てから知ったと話す人もいた。
 写真スタジオ、飲食店、農業ビジネス……。口から出るのは現在の職場とは縁遠い夢ばかり。ある実習生は「送り出し機関からは、日本では仕事の経験を積むため、勤務経験を得るために日本に来たと答えるように言われた。でも第一はお金を稼ぐこと。だって、今働いている水産加工場をインドネシアで開けると思う?」と逆に質問された。
*  *
 取材で浮かび上がった実習生の本音と受け入れ団体側の対応方針を、全3回の連載で伝える。(中島昭浩、写真も)(つづく)

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