被災の記憶、後世に 中部スラウェシ震災 ユネスコ、博物館の復興支援

 国連教育科学文化機関(ユネスコ)が、2018年9月の中部スラウェシ震災の記憶を後世に伝えるための支援を始めた。約7割の収蔵品が被害を受けた、州立博物館の職員への補修手順指導や災害記録の保存・展示方法を知ってもらう目的で日本の博物館を巡るスタディーツアーを実施。今後は日本を例にした震災展示コーナーが設置される見通しで、博物館に防災減災の意識を地域に発信する役割を担わせたい考え。
 支援は、自然災害や武力紛争などの人災による文化財や文化の多様性喪失の危機に対応するため、15年に設立されたユネスコ遺産緊急基金を通して行われ、同様の援助を実施するオランダの非政府組織(NGO)プリンスクラウス基金、紙資料修復事業を手掛ける東京修復保存センター(TRCC、東京青梅市)が協力。割れた陶磁器など収蔵品の補修▽災害リスク軽減方法の見直しと拡張▽一般市民への災害注意喚起、減災教育――の3事業が柱となっている。
 ユネスコ・ジャカルタ事務所から18年末に承認が下り、複数の取り組みがことし7月まで実施される。支援総額は約400万円。
 中部スラウェシ州立博物館は震災で陶磁器計834点のうち約7割に破損などの被害があった。修復と再分類作業は専門家の指導のもと、職員15人が実施。支援で届いた耐衝撃性を備えた折りたたみ式の収納箱200個に移し替えた。
 イクサム・ジョリミ副館長は1月下旬の8日間、東日本大震災や阪神淡路大震災の被災地を訪問。宮城県石巻市の震災伝承スペースつなぐ館や東松島市の震災復興伝承館、多賀城市東北歴史博物館、気仙沼市リアス・アーク美術館の展示や防潮堤の建設現場などを見て回った。
 震災前後を比較し、復興のプロセスを展示する手法や被災女性らが津波で流された廃材を使って手工芸品を作る取り組みのほか、縄文人が津波が来ないところに住んでいたことなどを示す史料がある、奥松島縄文村歴史資料館(東松島市)の展示には「日本人は昔の知恵を今日に生かしている」と感銘を受けた。
 「車や家、子ども、街のがれき、当時を伝える新聞などカテゴリーごとにまとめる手法はとても参考になった」と収穫を得た様子で、「被災体験を後世に伝えることや災害リスク軽減への取り組みで、国内で最良の例となる博物館にすること」を目標に掲げた。
 支援事業をコーディネートする、紙資料修復専門家でジャカルタ特別州立織物博物館特別研究員の坂本勇さんは「地域や子どもたちへの防災減災教育体験コーナーなどを館内に設置することが一番大変」と今後を見据えた。
 日本の被災地訪問には地元紙ラダル・スルテンの記者も同行。9日から滞在の様子を連載している。(中島昭浩)

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