安定成長・外的リスクに注視 ことしの経済展望 選挙影響は限定的 三菱UFJ銀・江島支店長

 アジア通貨危機以来の安値を昨年記録した通貨ルピアの為替相場が、1ドル=1万4千ルピア周辺まで戻ってきている。三菱UFJ銀行の江島大輔・執行役員ジャカルタ支店長はこのほど、じゃかるた新聞の取材に対し、「昨年比で為替は安定し、ことしの経済は大崩れしない感がある」と話し、大統領選の影響も限定的であることから、ことしの国内総生産(GDP)成長率が5・2%を超える見通しを示した。米中貿易摩擦や中国経済減速といった中国リスクの影響による、貿易赤字拡大への懸念についても言及した。
 江島支店長は年始来の為替相場について「昨年半ばから秋にかけ、急速にルピア安に振れた後の調整局面にある。当面は安定して動いていくのでは」との見方を話した。
 昨年は米国の利上げや米中貿易摩擦の影響で10月には1ドル=1万5200ルピア台の安値を記録した。
 その後、貿易赤字の要因の一つである原油価格が急落したこともあり、ルピア安圧力は緩和された。10月末以降、株式・債券市場への海外投資家の資金還流の動きが顕著になったことも追い風となり、相場は回復した。
 原油価格が再び上昇する機運があることは懸念事項だが、「(米国の金利上昇ペースも緩やかで)昨年のように新興国から急速に資金が流出していくことは考えにくい」と説明する。インドネシアの経済が内需に支えられ、大崩れする要因に乏しいことから「底堅く推移する」と見ている。
 昨年は為替安定などを目的として、中央銀行は計6回1・75%分の政策金利引き上げを実施した。ことしについては「為替が急速にルピア安に振れない限り、金利を上げるメリットは少ない。インフレも安定している。金利の引き上げ局面は終わり、下げるタイミングを探っていくのでは」と展望を示した。
■選挙後の投資に期待
 4月の大統領選については「どちらが勝利しても設備投資、インフラ整備を継続して、経済を成長させていくという点では変わらない。経済面ではサプライズにならない」と話す。為替の不安要因の軽減、個人消費の堅調さ、大統領選後の総固定資本形成(設備や住宅などへの投資)増加への期待感などから、GDP成長率が5・2%以上となる見通しを示した。
 ことし注視すべき点は、最大の貿易相手国である中国に関するリスク。実際に直接投資額を見ると、2017年の中国・香港の合計は55億ドルで、日本の50億ドルを上回る水準まで成長していたが、昨年は44億ドルに減少している。
 中国経済の冷え込みはインドネシアからの石炭輸出にも影響する。また、中国が米国以外の輸出先を探す中で、インドネシアの貿易赤字が増えることも考えられる。為替への影響と並行して注視していく必要があるという。ただ、「中国リスクから、インドネシアの地位が相対的に向上する可能性もある」点も指摘した。
 昨年の金融機関の貸し出しは二桁成長する大手銀行も多く出るなど順調に伸びた。日系企業向けの融資については、第2工場建設や設備増強の案件などがあり「ファイナンスのニーズの芽が出てきつつある」と期待を語った。(平野慧、写真も)

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