「名人」の人生、後世へ 高校生「聞き書き」活動 日本から広がる

 高校生が昔ながらの知恵や技術を持つ「名人」を訪ね、仕事や暮らし、生き方などを取材して後世につなげる「Kikigaki」活動が、インドネシアでも広がりつつある。日本で2002年から毎年開催されている「聞き書き甲子園」(農林水産省などの実行委員会主催)がきっかけになっている。

 インドネシアで活動が始まったのは12年。日本の活動に参加していた高校が、ボゴール農科大(IPB)付属コルニタ高校と姉妹関係にあったことから、「Kikigaki」と銘打った活動が海外で初めて行われるようになったという。
 活動は、第1回聞き書き甲子園に参加した元生徒たちが立ち上げたNPO法人、共存の森ネットワークの吉野奈保子理事・事務局長、愛媛大学准教授の島上宗子さんらが協力しており、12年に中部スラウェシ州パル市、17年に中部カリマンタン州パランカラヤ、18年にスラウェシ島ゴロンタロ州と広がっている。
 地域独自の言語で話を聞いた場合は、そのまま記録する。話を聞く「名人」は漁師や伝統工芸を手掛ける職人、ジャムーの原料となる草や根を探してくるおばさんなど、幅広い。
 2日にはボゴール農科大学で「Kikigakiセミナー」が行われ、2018年に集めた34作品の中から優秀賞の9人を表彰した。
 金賞を受賞したゴロンタロの高校2年イルハム・アリフさんは、ゴロンタロ伝統のクラワンと呼ばれる刺しゅうの職人に聞き書きをした。「伝統の刺しゅうは知っていたが、こうして作るということは知らなかった」と振り返り、仕事内容や職人の人となり、継承者が少なくなっている現状などを、ゴロンタロ語とインドネシア語でまとめた。
 銅賞のゴロンタロのモハンマド・シャワル・A・ヌシさんは、近所で石灰岩を採掘する男性に聞き書きをした。シャワルさんは、学校の行き帰りに見かける男性の仕事はつらくて汚いなどと思っていたという。しかし、「話を聞いてみたらいろいろな工夫があってすごいと思った。見た目だけで判断して仕事を軽視するのはよくないと思った」などと振り返った。
 また、中部スラウェシ州パルの生徒は、18年9月に発生した地震・津波の被災者に行った聞き書きを発表。日本側からは、東日本大震災の後に実施した聞き書きの経験が語られた。
 共存の森ネットワークの吉野奈保子理事・事務局長は「(聞き書きは)ただのアーカイブではない。高校生自身が現状の課題を見つけたり、どうしていけばよいのだろうなど、自分たちで考える。過去を聞きながら、未来を考えていってもらえれば」としている。(上村夏美)

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