離島に残る津波の恐怖 アナック・クラカタウ山から15キロ ランプン州スベシ島

 「これが私の家だった」。ランプン州スベシ島の漁師、サムスルさん(50)が指差す先には、津波で破壊された住居の土台やがれき、木片の山があった。スンダ海峡津波から1カ月。津波発生の引き金となったアナック・クラカタウ山から約15キロのスベシ島で、不安を抱えながら生活する人々を追った。

 スベシ島はスマトラ島とジャワ島の間に浮かぶ2600ヘクタールほどの島で、人口は約2800人。津波発生後はスマトラ島側の南ランプン県カリアンダなどに約2300人が避難していたが、21日までに2千人が戻ってきた。
 島に戻った住民も、支援物資を得るためにカリアンダと行き来している。20日、カリアンダの港に行くと、津波で故障したバイクを載せた船が係留されていた。島内で直せる場所がなく、島から運んできたという。船は支援物資の水や食料を積み込んで島に戻る。計3隻のうち余裕がある船に同乗させてもらい、スベシ島に向かった。
 船で2時間ほどの道中、進行方向のはるか前方にアナック・クラカタウ山が見える。漁師のサムスルさんは「昔は山のおかげで外国から観光客も来ていたが、今では誰も寄り付かない」と悲しげに山を見つめる。
 津波で家と船を失い、現在は家族と島内の親戚の家に身を寄せている。「今は知人の漁を手伝うしかお金を稼ぐ手段がない。支援物資がなくなったら、どうやって生活をしていけばいいのか」と不安そうに続けた。
 島に着くと、あちこちから煙が上がっているのが見えた。津波で破壊された道を歩いていくと、戻った住民が家の残骸から売れる木材をより分け、残りを流木とともに燃やしていた。
 「噴火はいつも起きていた。津波が来るなんて思っていなかった」。サムスルさんの叔父、ユヌスさん(62)はそう語る。アナック・クラカタウ山は断続的に噴火してきた活火山。空高く上る噴煙も島では見慣れた景色だった。だが噴火活動が津波を引き起こし、島に押し寄せて来る可能性については聞いたことがなかったという。
 津波は12月22日午後9時半ごろ島に到達した。この時の経験から、ユヌスさんたちは夜になると、交代で海の様子を見に行くのが日課になった。島の電気供給は午前0時になると切れるため、電池式のライトで室内を照らす。インターネットがつながる場所も限られており、自分自身で警戒するしかない。
 サムスルさんとともにユヌスさんの家に身を寄せるカシムさん(58)は「近くに山が見え、いつまでも不安は消えない。早く海沿いから離れたところに家を持ちたい」と疲れた顔を見せた。
 一夜明け、午前7時ごろ、カリアンダに戻る船に乗り込むと、空になった給水タンク、修理に出すバイクが一緒に載せられた。同乗した妊娠半年のエコーさん(33)は3歳の娘を連れていた。中部ジャワ州の親戚の家に向かうという。「家は無事なので戻ったが、津波が怖くて住んでいられない。子どもと安全なところで生活したい」とお腹をさすりながら話した。
 スベシ島で被災した際、足を負傷し、妻とカリアンダの避難施設に住むモリオノさん(56)は「島に帰りたいが、妻がトラウマを抱えてしまい、一人にしておけない」と話した。津波で家を失い、政府の支援で新しい住宅ができるまで避難生活を送るという。(大野航太郎、写真も)

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