崩れたワルン、突っ込んだ車 にぎわい消えたアニェル海岸 「背丈より高い津波」
ぐしゃりと崩れたワルン(食堂)に民家に突っ込んだ車、廃材の山……。バンテン州セラン県のアニェル海岸沿いを南下していくと、チナンカ郡に入ってから津波の痕跡が見え始めた。ビラやホテルが立ち並び、週末は行楽客でにぎわうはずの通りは閑散。当時いた宿泊客や住民は「背丈より高い津波が来た」「津波は3回来た」と振り返った。
「ビラ・アフィレディタ」と看板が出ていた敷地に入ると、連なった平屋の建物2棟に車3台が突っ込んでいた。他の建物も廃材がなだれ込み、瓦やブロックが散乱。津波は海岸から約100メートルの敷地一帯を襲ったようで、ビラはもぬけの殻だった。
隣のビラにいたセランラヤ大学のスンダ・バハリさん(22)は「ビラの広場で友人と遊んでいたら、海岸から『波が上がってる!』と声が聞こえ人が逃げてきた。その後2回、3回と津波が来て、3回目の津波は人の背丈より高く、2メートルくらいあったと思う」と話す。スンダさんは学生団体のイベントのため64人でビラを訪れており、「仲間の4、5人がけがした。この一帯の三つのビラだけで6人が亡くなったそう」と声を落とした。
チナンカ郡の海岸で警備などの観光ボランティアをしている住民のヤンさん(28)は海岸にいたところ津波に遭った。「数分間に3回の津波」に海岸はパニックで、皆一目散に走ったという。「かわいそうなのはワルンや物売りの女性たち。簡易的なつくりの店はほとんど全壊してしまった」
チナンカ郡のプスケスマス(保健所)によると、郡内で少なくとも12人が死亡、36人が負傷、31人が行方不明になっている。同郡には23日昼、災害ボランティア「タガナ」のポスコ(詰め所)が開設、セラン県内から約70人のボランティアが集まった。約千人いるとみられる避難者向けに食事を用意している。(木村綾、写真も)