アチェ南西沖でM8.6 高さ1メートルの津波観測 死傷者の報告なし

 十一日午後三時三十八分、スマトラ島アチェ州南西沖でマグニチュード(M)八・六(米地質調査所=USGS)の地震が発生した。震源地は同州シムル島シナブンから西約三百七十キロの沖合で、震源の深さは二十二キロ。この地震で、インド洋沿岸の同州西アチェ県ムラボでは、地震の約一時間半後に高さ百二センチの津波を観測した。国家災害対策庁(BNPB)によると、同日夜時点で、この地震による死傷者や建物などへの被害の報告はない。二〇〇四年十二月のスマトラ沖地震で十七万人が犠牲となった同州の州都バンダアチェ市では強い揺れを感じ、高い場所へ避難しようとする住民で道路が混雑。一時パニックとなった。

 余震とみられる地震が続いており、午後五時四十三分にはシナブンから西約四百八十キロの沖合を震源地とするM八・二の地震が発生した。震源の深さは十六キロ。
 国家災害対策庁はブンクル州とランプン州、アチェ州、西スマトラ州、北スマトラ州の五州に津波警報を発令。午後八時過ぎに警報を解除した。太平洋津波警報センターも、インド洋全域に津波への警戒を呼び掛け、同日夜までにすべて解除した。
 メダン総領事館によると、午後九時時点で邦人の被害の報告はないが、引き続き安否確認を続けている。同総領事館が管轄する六州(アチェ州、北スマトラ州、西スマトラ州、ジャンビ州、リアウ州、リアウ諸島州)に住む在留邦人総数(日本国民で三カ月以上の長期滞在者と永住者の合計)は、二〇一〇年十月一日時点で三百六人。
 アチェ州中部の内陸にあるタケゴン県タワール湖近隣で国際協力機構(JICA)の水力発電所建設事業に従事している日本工営の西宮宏伸さんは「物が落ちるほどではないが、かなり強い揺れを感じた。事務所の職員は外に避難をした」と地震の状況を話した。
 北スマトラ州のニアス島西海岸にいた同島住民のアフェリアヌス・テラオベヌアさん(三八)は「激しい揺れを感じたが、二〇〇五年三月のニアス島地震ほどではなかった」と話した。
 タイやマレーシア、シンガポール、インドなど周辺国でも揺れを感じ、津波警報を出すなど対応。タイ南部では十センチの津波を観測した。ジャカルタでは揺れは感じなかった。

■横ずれ断層型か
 東京大学地震研究所の大木聖子助教はじゃかるた新聞の電話取材で、地震は横ずれ断層によって発生したとの見方を示した。
 横ずれ断層型は巨大津波を引き起こした東日本大震災や二〇〇四年のスマトラ沖地震の逆断層型とは異なり海底の上下変化は少なく、一般的にあまり津波を引き起こさないという。
 ただ、横ずれ断層型の地震のあとに海底地すべりが発生すると巨大な津波を引き起こす可能性があると説明した。
 二回目の大きな地震も同様の横ずれ断層型であるとの見方を示し、一回目の地震が誘発して起きたと指摘した。
 大木助教は今回の地震は、〇四年のスマトラ沖地震がスマトラ島があるユーラシアプレートと沈みこんでいるインド・オーストラリアプレートの力のバランスに影響を与えて起きたものと考えられると話した。

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