日本の素材生かして JCC 手工芸品展示会
インドネシアの伝統手工芸品展示・即売会「ワリサン2018」が25日まで、中央ジャカルタのジャカルタ・コンベンションセンター(JCC)のアセンブリーホールで開かれている。出展する全115ブースの中に、日本の素材を使ったインドネシア人デザイナー15人の伝統手工芸品約450点が並ぶ。
デザイナーたちが使用しているのは、旭化成独自の素材「キュプラ(ブランド名ベンベルグ)」だ。ベンベルグは、コットンの種の回りにあるうぶ毛で作られ、布にするとシルクのような肌触りや光沢、コットンのような心地良さも持つ独自の素材。
北スマトラ州メダンのテキスタイルデザイナー、トラン・シトルスさん(40)は、ベンベルグで織ったバタック人の織物「ウロス」を展示。
「これまでウロスは、コットンやシルクなどで織っていて生地が固かった。しかし、ベンベルグで織るとこれまでにないとても柔らかいウロスができた」と話す。柔らかさに加え、色鮮やかで滑らかな肌触りのため、ストールとして使えるという。また、染色性に優れており、これまで10回かけて入れていた色が2回で入るようになったという。今後、これまでになかったウロスとして広めていきたい、とトランさんは意気込む。
ブランド「フィエラ」を手掛ける西ジャワ州ガルット県のデザイナー、ルダ・プラタマさん(27)はベンベルグを使用したテヌン(織物)を展示。「フィエラではシルクをメーンに織物を手掛けてきた。しかし、シルクを輸入に頼る国内では価格が高い。ベンベルグはより安価だがシルクのような光沢を出す」と話す。
また、ベンベルグを使用することでシルク着用をハラム(イスラムの教義に反する)とするイスラム教徒の男性にもマーケットを広げられるのではと期待した。
インドネシアの伝統手工芸品を手掛ける国内デザイナーたちが、ベンベルグを使った作品を披露するのはことし4月に開かれた手工芸品展「イナクラフト」以来、2度目。
当初から地元デザイナーたちとベンベルグのコラボをコーディネートしてきたロイヤルシルク財団の黒田正人さんは、「国内ではシルクを主に中国からの輸入に頼っている。約9割が輸入。価格が高騰していることから、ベンベルグは近年シルクに変わる素材として注目を集めている」と話す。(上村夏美、写真も)