【難民回廊①】第三国定住目指す1万3800人 インドネシアで待つ人々
ことし1月末、西ジャカルタ区カリデレスの出入国管理局収容所前のペタ・スラタン通りに、アフガニスタンやスーダン、ソマリアなどから逃れてきた若者や子ども連れの家族ら約60人の姿があった。太陽が照りつけ、車の排ガスにさらされる歩道に敷かれたブルーシートの上で暇そうにしている若者の姿が目に付く。雨が降ってくると男たちがブルーシートの屋根を慣れた手つきで作り始めた。
長い人だと1カ月以上ここで生活している。国際移住機関(IOM)が行う生活支援受給のため、入管に一時的に保護されるのを待っているのだという。
待っているのは、インドネシアに来て5~6年たち、家族からの仕送りも底を尽きた人や、インドネシアに到着してすぐに密入国ブローカーに連れられてきた人などさまざま。複数のインドネシアの非営利団体(NPO)が毎日、食事や生活用品を支給し、健康状態の悪い人には薬や病院も手配していた。
ことし2月時点で国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)インドネシアに登録している難民・亡命者は約1万3800人。さまざまな民族・国籍の人が行き交うこの国で難民は、インドネシア人にも外国人にも普段は「目に見えにくい存在」ではあるが、相当数がいることが分かる。
その一方で、インドネシアは難民の地位に関する条約ならびに難民の地位に関する議定書(いわゆる難民条約)に加盟しておらず、また、難民の定住・就労を認めていない。彼らは皆、ここでオーストラリアやカナダといった第三国が難民として受け入れてくれるのを待っている。しかし、先進国の世論が反難民受け入れの様相を帯びてくる中、各国は難民の受け入れ定員を狭めつつある。
一方で難民の数は減ることなく、第三国定住も簡単に決まらず、数年間を要することが常態化している。
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難民たちはどのような思いで、インドネシアでその時を待っているのか。その現場を追った。 (続く)(坂田優菜、写真も)