「タンク、パイプライン大破」 チレゴン工業団地 国内初、ASEAN緊急対応訓練 地震・津波で産業災害想定
スンダ海峡沿岸に化学製品工場などが集まるバンテン州チレゴン市のクラカタウ工業団地の敷地内で8日、東南アジア諸国連合(ASEAN)地域災害緊急対応訓練(ARDEX)が国内で初めて行われた。大地震後のガスタンク爆発など、産業災害の併発を想定し、インドネシアなど20カ国の災害対策関係者ら442人が避難や救出手順を確認し、約7時間に及んだ。
想定では、午前9時にチレゴン市から南西約240キロ沖でマグニチュード8・7の地震が発生。気象庁(BMKG)はチレゴン市に高さ3~4メートルの津波警報を発令。津波はジャカルタ特別州、バンテン、ランプン、西ジャワの各州にも到達の可能性が示され、ジャワ島南西沿岸部に最大で高さ10メートルの警報が出された。
訓練では、津波が1時間16分後に到達し、流されたがれきで有害な可燃性の液体が流れるパイプラインが破損、6人の被害者が出たことが判明。インドネシア陸軍原子力・生物・化学工兵中隊(NUBIKA)などが救出した。可燃性ガスタンクも爆発、炎上。ジャカルタの消防対策局らが消火に当たり、ベトナム軍が負傷者を運び出した。
ブルネイ消防救命隊のハナピさん(36)は「パイプ破損の訓練は初めて。いろいろな想定をすることは大切で、他国と合同で訓練すると相互理解も深まる」と意を強くする。緊急医療チーム(EMT)役のチレゴン市立病院看護師アセップ・ムジュリさん(36)は「化学製品の災害が起きると、救出後と初期治療後に水や石けんで負傷者の汚染除去作業が入る。一つ知識が増えた」と話した。
ARDEXは2005年からASEAN域内で開催。16年からは2年に1度実施されている。今回は、ASEAN人道支援調整センター(AHAセンター)と国家防災庁(BNPB)が共催、バンテン州とチレゴン市が協力。周辺工業団地の会社員70人を加えた住民270人も参加した。(中島昭浩、写真も)