愛媛の置き薬を販売 10年越しで認可取得 ワカン・メディシンド社

 投資の拡大が期待されながら、外資企業による現地製造化は計画通りに進んでいない製薬業界。これに対し、愛媛県の中小企業の挑戦が奏功しつつある。厳しい規制を乗り越え、10年越しで日本の伝統的な漢方薬の置き薬(配置薬)の製造を実現、イオンモールBSDで販売開始させたワカン・メディシンド社の星徳一さん(72)に話を聞いた。

 イオンで販売されるのは万能胃腸薬(下痢止め)の「あかだま」で、大人の用量1回15粒服用で20回分の300粒が入り、1箱7千ルピア。食品医薬品監督庁(BPOM)の認可も取得済みだ。
 星さんは、バンテン州南タンゲラン市に工場があるワカン・メディシンド社の出資者で理事(コミサリス)。あかだまの原型となる「赤玉神功」を製造していた縁戚の製薬会社石川健康堂(本社・愛媛県西条市)では開発本部長を務めた。
 同社では薬を竹の皮に包む昔ながらの保存法が日本の薬事法に抵触したことなどもあり、現在は製造していない。星さんが、石川健康堂の先代社長に「必要とされる所に持っていってほしい」と頼まれたことが、インドネシアでの製造のきっかけだったという。
 同じく西条市に本社を置く建設業、藤井組の社長も務める星さんのインドネシアとの縁は政府開発援助(ODA)関係のダム建設から始まった。「10年ほど前に南スラウェシ州カレベダム建設に携わった際、職人たちの腹痛向けに持って行かせた。この時の効き目がインドネシアの業者の目に止まり、ぜひ持ってきてほしい、ということになった」と振り返る。
 「良い物は売れるはず」。信念を持って事業化に取り組んだが、工場建設予定地だった東ジャワ州スラバヤ市やバンテン州タンゲランでは許認可の問題でいずれも挫折。投資調整庁(BKPM)幹部を務めた人物の協力を得ることで、10年越しの夢を叶えることができた。
 あかだまの原料のうち、アセンヤクやトウモロコシデンプンはインドネシアで調達、他は日本から仕入れる。原料を混ぜて丸形にし、乾燥させてでき上がる。日本で有名な正露丸と比較して、においは控えめになっている。
 星さんは「(BPOMへの)認可申請から取得まで5年程度かかった」と振り返る。今後はイオンの店頭で販売するほか、通販で売っていくことも目指す。また、インドネシアで患者数が多い糖尿病向けの薬の研究もしている。これは石川健康堂では作った経験がない物で、新たな取り組みとなる。
 薬事法などの改正により、クリーンルームがないなどの理由で日本の中小の製薬企業には廃業している会社も多い中、挑戦は続く。星さんには石川健康堂の薬を復活させるべく「日本に逆に輸出したい」という思いも強い。中国や東南アジア諸国連合(ASEAN)などへの輸出も大きな目標だ。
 各種製造業で長い間、多くの物を生産してきた日系企業。その中でも少し欠けていた、店売り一般用漢方薬の分野がこれから注目されるかもしれない。愛媛で山岳信仰の道場、石鎚山に登る修験者の常備薬として用いられてきた「陀羅尼丸」を、「くろだま」として販売する計画も進んでいるという。(平野慧、写真も)

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