「前日まで一緒だった」 バリ旅行暗転 遺体搬送先、待つ家族
「事故前日まで一緒にバリに旅行していた。空港まではみんな一緒だった。いまでも信じられないんだ」。南スマトラ州パレンバン市在住のバユ・サプトラさん(26)は、携帯電話の画面にある旅先での家族写真を見つめ、肩を落とした。
乗客乗員189人を乗せたライオンエアJT610機が墜落した事故。発生4日目を迎えた1日までに、複数の遺体の一部が見つかったが、1人を除いて身元不明のままだ。遺体の搬送先の東ジャカルタ区クラマットジャティ警察病院に設けられた家族用待合室では、大勢の人々が不安を抱えながら、家族の帰りを待ち続けている。
バユさんの兄のチャンドラ・キラナさん(29)、兄嫁のチチ・アリスカさん(28)、おいのダダンさん(25)とアセップ・サリフディンさん(24)の4人が墜落機に乗っていた。
バユさんは事故前日の10月28日まで、4人と一緒にバリ島に旅行していた。チャンドラさんとチチさんは6カ月前に結婚したばかり。バユさんも5カ月前に結婚したばかりで、2組の結婚祝いを兼ねた、12人ほどの家族旅行だった。
仕事のためにバンカブリトゥン州パンカルピナンに住むチャンドラさんら4人と26日にジャカルタで合流し、ライオンエア便でバリ島に入り旅を満喫。28日昼にバリ島の空港で分かれ、バユさん夫妻はパレンバン行きの便に、チャンドラさんら4人は経由地のジャカルタへ向かった。
「ジャカルタで1泊して、パンカルピナンに帰るよ」。事故前夜の午後10時すぎにはチャンドラさん夫妻から連絡があり、これが最後のやり取りとなった。
翌朝、バユさんは墜落したジャカルタ発パンカルピナン行きの飛行機の搭乗者名簿に4人の名前を見つけた。その日のうちにジャカルタに駆け付け、1日も警察病院の待合室でテレビのニュースに目をこらし捜索の進展を見守った。だが4人はまだ行方不明のまま。着ていた服や荷物などの手がかりすら見つからない。
バユさんの携帯には、6日前に空港で撮ったばかりの、そろいのピンク色のシャツを身につけた家族写真がある。「4人みんなが見つかるまで、ここで待ち続ける」。そう言って口を結んだ。(木村綾)