震災時、集団でATM破り 動画が証拠、主犯格逮捕
中部スラウェシ州警察はこのほど、9月28日の地震・津波で被災したパル市沿岸部の大学構内に設置されていた国営ラクヤット・インドネシア銀行(BRI)子会社BRIシャリアの現金自動預け払い機(ATM)を破壊し、現金を盗んだとして、集団窃盗などの疑いで主犯格の男の容疑者(40)を逮捕した。被災し極限状態に陥っての犯行とみられるが、周囲にいた人が撮ったとみられる動画がソーシャルメディアなどに出回り、動かぬ証拠となった。
調べによると、容疑者はドンガラ県バナワ郡ボヤ村ベタロロ通りの自営業。地震発生翌日の29日、付近にいた見ず知らずの15人と、パル国立イスラム大学(IAIN)にあったATMに穴を開け、中の現金を抜き取った疑い。
南スラウェシ州ピンラン県マティロブル郡アリッタ村で10月20日に逮捕されたときには、425万ルピアを所持していた。BRIシャリアは、被害があったATM内に1億7225万ルピアが入っていたと発表している。
証拠動画では、容疑者は横に倒されたATMの側に座り、現金抜き取り役から大量の5万ルピア札を受け取り、腰巻で作った袋に収めながら「俺たちはもう死んだも同然」と犯行を肯定するような発言をし「俺が(抜き取るための穴を)開けたんだ。後で分けるからゆっくりしてろ」などと取り巻きに呼びかけていた。
中部スラウェシ州警のヘリー・ムルウォノ報道官は31日の会見で「他の犯人の身元や特徴はすでに割れている」と述べ、共犯の15容疑者の捜索を急ぐとした。州警によると、地震後に現金が抜き取られたATMは少なくとも7機。
容疑者は会見後に記者団に「地震後で食べるものも何もなかった。津波でATMが倒れていたので、周囲にいた人と犯行に及んだ」と述べた。有罪だと最長で禁錮5年が科される。
被災地では震災2日後の9月30日、チャフヨ・クモロ内務相が、ミニマーケット(コンビニ)から商品を持ち出していいとの趣旨の発言したことをきっかけに、モールや空港内の飲食店や衣料品店などで被災者による略奪が拡大。支援物資や燃料を積んだトラックも取り囲まれ、物資を奪われる映像がソーシャルメディアで拡散、被災地入りする支援団体が警察車両に護送される事態となった。
地元メディアによると、小売業協会(アプリンド)は、「マタハリ」や「ハイパーマート」など被災地に店舗があった会員企業の被害総額が約4500億ルピアに上ったとの見積もりを10月1日に発表。内相は22日、被災地の地方政府に対象店舗への補償金を支給したとし、他店舗は支援物資とすることを受け入れたと発言した。(中島昭浩、写真も)