海辺のモスク再建始まる 集落復興の足がかり 津波直撃のパル市西マンボロ
集落ごと津波にのみ込まれた中部スラウェシ州パル市西マンボロの海岸で、モスク「マスジド・バフルル・ウルム」の再建が始まった。海岸から50メートルに位置する同モスクはがれきと化したが、「集落の復興の足がかりにしたい」といち早く再建に着手。避難生活を送る住民たちはアザーン(礼拝の呼び掛け)の音が再び響く日を心待ちにしている。
9月28日午後6時すぎ。マグリブ(日没)の礼拝前で、モスクにはイマム(指導者)のデディー・スプリアディさん(45)ら約30人がいた。「地震が来て、急いで外に出たら、津波がやってくるのが見えて皆で走った。9メートルはあっただろう」と振り返る。
97世帯の集落は津波にのまれ、女性1人が亡くなった。散らばったがれきが今も津波の爪痕を残し、割れたタイルの床だけが、そこに確かにモスクがあったことを示していた。
その床の上でモスクの再建が始まったのは10月20日。民家の再建はおろか、周囲のがれき撤去もままならない中で、モスクの骨組みが着々とできている。デディーさんは「津波は毎日来るわけでなく、怖がっていても仕方がない。モスクをいち早く建設することで、集落全体の早い復興につなげたい。それが宗教指導者の立場から私ができることだ」。
住民の多くは南スラウェシ州からやってきたブギス人で、漁師や船の修理工などの仕事に就いている。船の修理工、アンボサカさん(46)は「男たちは仕事があり、海のそばから離れるわけにはいかない。モスクがまたできて、アザーンの音をまた聞けるようになったらうれしい」。
モスクの建設は中部ジャワ州ソロ市のイスラム財団「オンサイト・ファンデーション」が支援し、6人のボランティアが作業に当たっている。
プロジェクトリーダーのブディ・サントソさん(35)は「8月のロンボク島地震では、われわれの財団が1カ月で16のモスクを再建した。中部スラウェシではこれが初めてだ」と意気込む。(木村綾、写真も)