市場はどっこい生きている パル かすかな復旧の兆し

 「うちは地震の後も24時間、店を開けてきた。みんなに必要な物を売っているからね」。青果店を切り盛りする女性、ノニさん(55)が微笑んだ。9月28日の地震の被災地、中部スラウェシ州パル市にあるインプレス市場は、一部の店が営業を続け、トラックの荷台の行商人も集まり、にぎわいが戻りつつある。市内では7日までに、ガソリンスタンドの行列が短くなるなど、かすかな復旧の兆しも見え始めた。
 インプレス市場は、液状化現象で千数百戸が壊滅した国営住宅地がある市内バラロアに近い。
 「地震のときは車に乗っていてドーンと突き上げられ、すごい揺れだった。家も後ろの方が潰れてしまった。必死で神に許しを請い続けたら、のどが痛くなってしまった」とノニさん。
 棚にはオレンジやリンゴ、スイカなどが並ぶ。
 朝夕、道路脇には荷台に食品を積んだトラックが並ぶ。
 「クルプック(揚げせんべい)、クルプック、1袋5千ルピア。普通の値段、津波の前の値段だよ」。フィダヤさん(39)とウルファさん(17)の母娘が威勢よく客を呼ぶ。
 フィダヤさんは「地震の翌日も朝夕、売りに来た。地震で家は壊れてしまってテント暮らしだけれど、近所の家で毎回500袋ぐらい作っている」と話した。
 ヤンティさん(29)は夫(31)や9歳と5歳の娘と一緒にトウモロコシやナスを売る。
 「この商売は4日に始めたばかり。地震の後、(義理の)両親は寝込んでしまったし、みんなを養っていくには、これしかない。自分で作った野菜ではなく、人から仕入れている」
 大きめの店舗のシャッターが軒並み閉まっていることや、自動小銃を持った国軍兵士や警察機動隊員が目立つ点を除けば、インドネシアの地方都市の日常が戻ってきている。
 市中心部のスーパー「トランスマート」は6日、限定的に営業を再開した。まず購入希望品と名前を登録して行列。店員が品物を持ってくる。売っているのは生活必需品だけだ。
 9カ月の男の子ら4人の子どもを育てる主婦イタ・プスピタさん(44)は「赤ちゃんの粉ミルクがほしい。もう1時間も待っている。ほかでは手に入りそうもないし」と声を落とした。
 100台以上の行列が当たり前だったガソリンスタンドで、数台しか並んでいない所も出てきた。一部地域で電気が復旧し、営業を再開するゲストハウスも現れた。
 余震が続き、家を失った多くの住民が野外での生活を強いられている現実に変わりはないが、ささやかな光も見えてきた。(米元文秋、写真も)

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