集団暴行でサポーター死亡 バンドン、サッカー試合前 8人逮捕 国内リーグ1週間停止
国内サッカー1部リーグ「リーガ1」の試合が行われた、西ジャワ州バンドン市南部のバンドン・ラウタン・アピ競技場(GBLA)で23日午後1時ごろ、サポーター1人が相手チームの多数のサポーターから集団暴行を受けて死亡した。警察は24日までに、集団暴行致死などの疑いで8人を逮捕した。事件を受け、国内プロ競技を統括する青年スポーツ省の外郭団体プロスポーツ機構(BOPI)は、リーグを25日から1週間停止すると発表した。
試合は、プルシジャ・ジャカルタ(ジャカルタ特別州)とプルシブ・バンドン(西ジャワ州バンドン市)の第23節。バルセロナとレアル・マドリードのスペインリーグ両雄の試合「エル・クラシコ」の名で呼ばれ、国内で最も白熱するカードの一つ。2012年以降、両チームサポーターの衝突だけで6人が亡くなっている。
警察によると、死亡したのはプルシジャサポーター(通称ザ・ジャックマニア)の1人、西ジャカルタ区チュンカレン在住のハリンガ・シリラさん(23)。警察は現場などで16人を拘束、うち16~41歳の8人を刑法の集団暴行致死容疑などで逮捕した。
事件は、ハリンガさんが競技場入り口の一つ「ブルーゲート」に二輪車で到着したところで発生。プルシブのサポーター(通称ボボト)数人から住民登録証(KTP)の住所を確認され、突然「ジャックマニアがいるぞ!」と叫ばれ、仲間らに襲われた。近くのバッソ(肉団子)屋台に助けを求めたが、サポーターらに角材や割れた皿、ビンなどで暴行され亡くなった。
ソーシャルメディア上に流出した暴行の動画には、駐車場とみられる場所に止められた複数の二輪車の前でうずくまるハリンガさん目がけ、屋台の木製の長椅子(2~3人用)を投げつけるなど凄惨な暴行の現場が映されていた。ボボト200人ほどが周囲を取り巻いているため逃げ場はなく、両手で頭を抱えるだけのハリンガさん。血まみれになり、動かなくなった後、さらに踏みつける者もいた。
ジャックマニア幹部は、これまでも両チームサポーター間で衝突が起きていたため、警察当局から23日の試合観戦に行かないようにとの通達があり、メンバーは従っていたと明かす。「それでも(観戦に行くかは)個人の意思によるところがあり、残念でならない」と語った。事前にハリンガさんのソーシャルメディアのアカウントから観戦に行くとの情報が漏れ、ボボトがKTPをチェックする「検問」を行ったと話す関係者もいる。
事態を重く見たリチャード・サムベラBOPI代表は24日、青年スポーツ省で会見し、25日から1週間のリーグ停止を発表。国内リーグ運営会社のリーガ・インドネシア・バル(LIB)と国内サッカー協会(PSSI)に対し、停止期間中に再発防止の策定を求め、「今後一つの命も落とさせてはならない。効果的な対策を取らなければ停止期間を延長する」と語気を強めた。PSSIとLIBは近く対策案を発表する方針。
国内リーグをめぐっては、一部チームを複数のオーナーが所有していることなどを問題視した同省が15年にPSSIの活動を凍結し、リーグが休止状態に陥った。これを政府介入と見た国際サッカー連盟(FIFA)が、国際大会出場停止などの制裁を下した。以降、リーグ体制やチームに関する規定などの整備を進め、16年に凍結解除。17年に再開し、ことし2シーズン目を迎えたばかりだった。(中島昭浩)