【ロンボク島地震1カ月】リゾートにがれきの山 「津波か」高台へ避難

 ロンボク島北沖にあるギリ3島の中で最も大きく、観光開発が進んでいるギリトラワンガン島。美しいビーチに多くのカフェやバーがあり、外国人観光客らでにぎわう別名「パーティーアイランド」だ。8月5日の地震で多くの建物が倒壊し、下敷きになるなどして少なくとも2人が死亡。人々は津波から逃れようと島で唯一の丘へ駆け上がった。地震後に島から脱出した人は数千人とみられ、約1カ月がたった今も、島に戻った人は少ない。
 3日午前、北ロンボク県バンサル港からボートでギリトラワンガン島へ向かった。バンサル港のチケット売り場は地震で半壊。仮設売り場の係員よると、8月半ばからパブリックボートの運航を再開したものの、本数は通常時の半分にとどまる。40人乗りボートの乗客は9割以上が従業員や作業員らしき地元の人で、建物の修繕に使う瓦も積まれた。
 ギリトラワンガン島には昨年、旅行で訪れた。島の主な移動手段は自転車か馬車で、自転車で1時間半で1周できるほどの小さなリゾート島。上陸すると、かつてナイトマーケットが開かれにぎやかだった広場が、がれきの山と化していた。島中のがれきがここに集積され、ロンボク島へ運ばれるのだという。
 行きのボートで、島の旅行代理店でツアー手配の仕事をしていたというサトリアワンさん(29)と出会った。地震の翌朝に島を脱出し、中部ロンボク県プラヤの実家に身を寄せていたが、この日、状況を見るため約1カ月ぶりに島に戻るという。一緒に自転車で島を一周することにした。島を進むたび「誰もいない!」と嘆く。「このビーチも、あのバーも、いつもは朝から夜中までにぎやかなんだ」。営業している店やホテルは数えるほどで、島には観光客はおろか、従業員も余震を恐れてわずかしか戻っていなかった。
 8月5日夜。島にいた大勢の従業員や観光客は、津波から逃れようと丘を目指した。ビーチを見下ろせる島で一番高い場所で、夕日の鑑賞スポットとしても知られている。事務所にいたサトリアワンさんも「津波が来る! 丘へ逃げよう!」と誰かが叫ぶ声を聞き、丘への坂道を走った。停電で真っ暗な丘で不安な一夜を明かした。
 この丘は、地震後も島にとどまった人たちの避難先となった。3日も丘にはテントが張られたまま。島に残って暮らす地元住民は「まだ建物の中に入るのが怖い」と口をそろえる。
 一通り見て回った後、サトリアワンさんは「この様子じゃ仕事がなさそう。プラヤに帰って、しばらく日雇いの仕事でも探そうかと思う」とつぶやいた。(木村綾、写真も)

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