【ロンボク島地震1カ月】家取り壊し、再建いつ 雨期目前、小雨のテント村
ロンボク島で7月末以降立て続いた大地震は、多くの人々の住まいや生業を奪った。被災現場では家の取り壊し作業が進み、集落があったはずの場所はがれきや廃材の山だけが残った。家を失った住民たちは今、廃材で補強したテントで迫る雨期に備えている。
住宅の9割が倒壊し、3250人がテント村で避難生活を送る北ロンボク県プムナン郡マンガラ村。かつて集落があったはずの場所は1日までに、大半の家が取り壊され、散らばったがれきや廃材が地震の爪痕を残していた。
5日から避難生活を続けるリス・ムフイスさん(32)は「ここに家があったんだ」と声を落とした。家族5人で住んでいた一軒家だけでなく、オートバイを売り払ってことし建てたばかりの「離れ」も全壊した。
家の解体・撤去作業は住民自ら行う。避難者の間では高齢者やけが人に代わって1日50万ルピアで解体を請け負う人も出てきた。別の場所では、女性たちが家の再建に使えそうな木材から1本1本釘を抜いていた。「プムルン(拾った資源ごみを売って生計を立てる人)みたいでしょ」と力なく笑う。
1日、テント村には小雨が降った。政府は損壊度合に応じて1世帯当たり1千万~5千万ルピアを支給する考えだが、再建のめどは立っていない。「政府の支援を待っていたらいつになるかわからない」。住民の多くはテントで過ごす覚悟を決め、廃材や竹を使ってテントの屋根や床を補強し、雨対策を始めた。
自宅兼売店が倒壊したルスミアティさん(40)は、夫が運んできた廃材でテントの軒先に売店を構え、約3週間ぶりに営業を再開した。オートバイで30分かけて市場に行き、飲み物やお菓子を仕入れる。地震で夫の勤め先が倒壊し収入源は他にない。「あと1年くらいここで売り続けることになるんだろうか」とつぶやいた。
■被害免れた木造住宅
マンガラ村の家はほとんどが、レンガやコンクリート造りだった。多くの家が全壊や半壊した中、唯一被害を免れた木造住宅がある。テントで生活する住民たちは「あんな木の家を建てたい」と口をそろえる。
一家3人が暮らすこの家は、世帯主のゼヌディンさん(39)の建築家である兄が高級木材のマホガニーなどを使って約3年前に建てた。
ゼヌディンさん兄弟は、観光地にバンガローを建てたりレストラン用の木製家具を作ったりする仕事を請け負う。「兄が造った建物は地震で一つも壊れなかった」と誇らしげだ。
辺り一帯がテント村となった今、この家は高齢者が休息したり、水浴びしたりできる貴重な場所になっている。(木村綾、写真も)