最短で10月値上げも 補助金付き石油燃料価格 修正案で政府に権限

 石油燃料価格値上げをめぐり全国で八万人規模のデモが巻き起こる中、三十日から三十一日未明まで二〇一二年補正国家予算案の審議を続けた国会は、少なくとも十月までは値上げを先送りすることを決めた。だが、決議では、原油価格が一定の上昇幅を超えれば、政府に値上げの権限を与えるとの条項を盛り込んでおり、値上げをめぐる攻防は今後も続く可能性を秘めている。

 三十一日未明、二〇一二年補正国家予算案の石油燃料補助金に関する条項に、「インドネシア産原油公式販売価格(ICP)が、今後六カ月間の平均で基準値の一バレル百五ドルから一五%以上上昇、または下落した場合、政府が燃料販売価格を調整することができる」との文言が加えられ、福祉正義党(PKS)を除く連立与党五党が合意。
 これで、政府が計画していた四月一日からの値上げが回避され、四月から九月までの平均価格が一二〇・七五ドルを超えた場合、政府が値上げを実施できる見通しとなった。
 予算案が可決された三十一日の夜、ユドヨノ大統領は急きょ大統領宮殿(イスタナ)で閣議を招集。「四月一日から値上げしない」としたものの、国会の決議について、政府に強い権限が与えられたとの認識を示し、「燃料値上げが最後の手段という政府と同じ認識を持った同志によって作られたルール」と国会の決定を歓迎する言い回しで、値上げへの道筋としてとらえた。
 ダフラン・イスカン国営企業担当国務相は三十一日、値上げを見送り、補助金が充分に補填されていない補正予算では、旺盛な消費に耐えられず、八月までに今年予算として燃料向けに割り当てられた補助金が使い果たされるため、九月以降は補助金付き燃料を供給するのが困難になると主張。現状のまま放置しておくと「九、十月に社会不安が起きるだろう」と語り、八月以前に政府の施策が必要になると強調した。
 ICPは三月、世界の原油価格高騰を背景に、すでに一五%上昇値の一二〇・七五ドルに近い、百十五―百二十ドルで推移。二月は一二二・一七ドルを記録しており、政府に十月値上げの決定権が与えられる可能性が高い。
 また、本会議の途中で退場した闘争民主党などの反対派は、三十一日の決議内容は違憲などとして、憲法裁判所に提訴する構え。憲法裁が違憲判決を下せば、値上げをめぐる議論は振り出しに戻る。

■全廃案から後退
 昨年に計画していた値上げは国会の猛反発で頓挫した。今年は昨年末までに国会が承認した二〇一二年予算に値上げが盛り込まれたことを根拠として、年初の閣議で大統領が「補助金燃料の消費量を削減する」と音頭をとるなど、エネルギー鉱物資源省、大蔵省など政府と中銀が一体となって燃料補助金の完全削減を目指した。しかし、与党を含めた各勢力の反発で、段階的な削減案に後退。今回の決議で再度、延期されることになった。
 二〇一二年予算における歳出の一割強となる燃料補助金は財政負担が高く、一九九〇年代後半から、国際通貨基金(IMF)をはじめとする国際社会は、補助金削減の必要性を強く主張。自動車を保有できる中間層が八割超を使っているとの統計もあり、国内でも経済専門家、市場筋などから廃止論が出ている。一方、非効率な財政運営や依然としてまん延する汚職などを先に解決すべきとの意見も上がっている。

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