再発防止訴え続ける 15年の殺害事件以来 西村良美さんの両親
2015年9月に南ジャカルタ区テベットのマンション自室で、西村良美さん=当時(28)=がマンション警備員に殺害された事件から2年10カ月が過ぎた。「再発防止が一番の供養」と在留邦人の安全向上を訴え続けてきた良美さんの父、健さん(69)は9日に来イし「日系企業や大使館が真剣に対応しているのを感じられた」と安堵の表情を浮かべた。
健さんによると、14年9月に来イした良美さんは、15年からヤマハ発動機の現地法人に勤務。仕事を終え夜に帰宅したところを強盗目的の犯人に絞殺された。犯人には禁錮15年の実刑が下った。
健さんは、事件直後の再発防止に向けた活動は「孤立状態」だったと振り返る。知人や弁護士からは「インドネシアで事件に遭うのは当たり前」「自己責任」といった厳しい言葉を浴びせられたこともあったという。
それでも健さんは声を上げ続け、ことし2月に改訂された在インドネシア日本大使館の「海外安全対策マニュアル」は良美さんの事件を紹介、住居についての項目が見直されるなど、具体的な成果につなげた。
健さんと妻の恵子さん(61)は9日、良美さんが日本語教師のボランティアをしていた西ジャワ州ブカシ県の私立高校など、ゆかりの地を巡り、夜には良美さんの友人約10人と食事会を開いた。恵子さんは「娘は1年ほどの内にいろんな方たちと交流して、短い間にぎゅっと濃縮した人生を送っていた」と語る。
10日には海外邦人安全対策連絡協議会による健さんの講演が中央ジャカルタの在インドネシア日本大使館で行われ、日本企業関係者ら約30人が参加した。
「娘の事件とは死ぬまで向き合っていかなくてはいけない」と話す健さん。今回の来イでは良美さんの友人のインドネシア人とも交流を深め、「これからはインドネシアの良いところをたくさん見ていきたいなと思えた」と語った。(大野航太郎、写真も)