TPPに参加検討 カラ副大統領 東京の講演で表明

 ユスフ・カラ副大統領は12日、東京都内での講演で「インドネシアは環太平洋連携協定(TPP)に参加する方向で検討を進めている」と明らかにした。TPP参加についてジョコ・ウィドド(通称ジョコウィ)政権は当初、国内産業保護の思惑などから慎重に構えていた。しかし、伸び悩む経済浮揚に向け貿易、外資誘致拡大のため方針転換に踏み切ったものとみられる。同副大統領は安倍晋三首相が提案した「自由で開かれたインド太平洋戦略」にも前向きな姿勢を示した。

 カラ副大統領はマレーシアのマハティール首相や安倍首相らアジアの首相、閣僚級が講演する国際セミナー「アジアの未来」(日本経済新聞社主催)の基調講演で、インドネシアを代表して講演した。TPPについて同国では最近、スリ・ムルヤニ財務相、エンガルティヤスト・ルキタ商業相ら関係閣僚が相次いで加盟に前向きな姿勢を表明していた。
 トランプ大統領の強い意向でTPP交渉からいったん離脱した米国も、最近になってTPPへの復帰の可能性を示唆している。主要先進国、主要発展国が集まるG20(20カ国財務相・中央銀行総裁会議)のメンバーであるインドネシアが前向き姿勢を明確にしたことで、TPPをめぐる国際的な動きが勢いを増すことも考えられる。
 カラ副大統領はこれに先立って、世界の繁栄と安定を達成するには、互いに開放的なシステム(自由貿易)が重要な役割を果たすとの認識を示した。その上で、米国のTPPやパリ協定離脱、各国との貿易戦争にみられる保護主義の傾向に懸念を示し、「各国が協力してこうした問題に対処しよう」と呼びかけた。
 同国ではTPPについて、これまで「インドネシアは参加を望んでいる」とする一方で、「さまざまな国内問題も考える必要がある」(スリ財務相)と慎重な構えも見せていた。最近では東南アジア諸国連合(ASEAN)の中で加盟国からの意見も聞く姿勢に転じている。カラ副大統領は「ASEANにおいて人口と経済の4割を占めるインドネシアが政治・経済ともに安定していることが同地域の繁栄をもたらす」と強調しており、TPPをめぐる同国の動きが今後、注目される。(斉藤麻侑子、写真も)

インド太平洋 戦略へ協力表明

 ユスフ・カラ副大統領は講演の中で、2016年8月に安倍晋三首相が骨太の外交戦略として打ち出したインド太平洋戦略についてインドネシアが協力する意向も表明した。日本、米国、インド、オーストラリアの4カ国を中心に周辺地域各国が協力して地域の平和と発展を目指すもので、この地域でも軍事的にも存在感を高めている中国を意識している。
 すでに日本はインドネシアやフィリピンに対して沿岸警備といった名目で、各国の海洋安全保障政策に協力を始めている。インドネシアはかねて「非同盟中立」が独立以来の伝統的外交姿勢。反共、実質親米だったスハルト長期政権でもこの建前を貫いており、少なくも日本も含む米国側に肩入れする姿勢は避けていた。
 その意味でカラ副大統領の発言は注目に値する。少なくともインドネシアは台頭する中国の存在について経済的にはプラス、と前向きに受け止め、安全保障に関する危惧にはあえて触れることに慎重だった。外交姿勢に変化が見えたのは、中国との間で南シナ海のナトゥナ島海域をめぐる領有権問題が発生してからだ。インド太平洋戦略への協力表明にはそんな含みが読み取れる。(小牧利寿)

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