オートバイで故郷へ レバラン帰省 モスクで寝泊まり
レバラン(断食月明け大祭)帰省の最初のピークを迎えた8、9両日、首都圏の大通りは帰省客で混雑した。他の交通機関と比べ、安価で道中も楽しめるとオートバイの帰省者は多い。各地の休憩所やモスクなどで寝泊まりしながら、何日もかけて故郷に向かう家族連れやオートバイ愛好者たちに話を聞いた。
普段は朝夕の渋滞で知られる東ジャカルタ区ラヤ・カリマラン通り。8日深夜、途切れることなく車やオートバイが走っていく。
道路脇で生後9カ月の息子にミルクをあげていたのは運送会社配達員のトピックさん(26)。2世帯7人、オートバイ3台で中部ジャワ州トゥマングン県へ向かう。
初孫を待つ両親に早く会わせたいが、「赤ん坊を乗せて走るのは初めて。ゆっくり休みながら進むよ」。兄夫妻や弟2人とともに安全運転を心がける。乳児を抱えて帰省するのは大変だが、道端の屋台でミルク用のお湯をもらえるので助かるという。
帰省者用の休憩所で休んでいたのは、妻と6歳の娘が待つジョクジャカルタ特別州出身のトラック運転手アリーさん(30)。フェイスブックでオートバイ愛好クラブが各地に設けている休憩所をチェックし、そこで寝泊まりしながら5日間かけて帰る。「オートバイで行くのは安くて楽しい。娘に道中の土産話をたくさんしたい」。
銀行警備員のルリーさん(33)は1週間かけて西スマトラ州パダン市の実家へ。ジャカルタから西へ向かい、バンテン州チレゴンのメラック港からフェリーにオートバイを積んで海を渡る。
スマトラ島の山岳地帯の険しい山道を走り、インド洋に面するパダンまで遠路約1350キロ。東京〜鹿児島間と同じくらいの距離だ。予算は70万ルピア。半年以上かけて貯金したが、途中、ホテルに泊まる余裕はない。モスクなどで寝泊まりする予定だが、なければ野宿もいとわない。
「ツーリングは趣味。でも帰省にオートバイを使うのは初めて」と笑顔で話す。海外出稼ぎ中の友人にはマレーシアやタイから西スマトラまでオートバイで帰省する人もいるという。(大野航太郎、写真も)