みいつの夜過ごす イスティクラル・モスク
中央ジャカルタのイスティクラル・モスクには、ラマダン(断食月)明け前の10日間、モスクにこもって信仰心を高める「イティカフ」を実践するため、各地から信者が訪れる。10日未明には、その夜の善行が千カ月分(約83年分)以上の善行に匹敵するとされる「ライラトゥル・カダル(みいつの夜)」の礼拝があり、5千人超が祈りをささげた。
「イティカフではコーランを読んだり祈りをささげたりする。自分を省みるとともに、多くの同士と互いに励まし合う機会でもある」と教えてくれたのは、マルク州アンボン市出身のイブラヒム・タンケさん(56)。「20年ほど前から深くイスラムを学び、学んだことを普段の生活で実践するために始めた。おかげで食べたいものが目の前にあっても、我慢できるようになったんだ」
みいつの夜は、預言者ムハンマドにアッラーからコーランが最初に啓示されたとされる夜。「みいつ」は「御稜威」「御厳」の意味で、イティカフが始まるヒジュラ暦(イスラムの暦)でラマダン月の21日(6月6日)から10日間のうち、奇数日(21、23、25、27、29の5日)のいずれかに訪れるとされる。
ことしで5回目のイティカフという中央ジャカルタ・クマヨラン在住のアデ・ラスティニさん(60)は「どの日がみいつの夜かはさまざまな議論があるので、私たちにも分からない。重要なのは、10日間集中して信仰心を高めること」と話す。
宗教省イスティクラル・モスク管理事務所によると、イティカフの時期は1日平均3千人が礼拝に訪れ、モスクに滞在する人は1、2泊の短期も含め、約千人に上る。2週間以上の長期滞在者は約100人ほどいる。ブカ・プアサ(1日の断食明け)とサフール(日の出前の食事)は毎回3500食を用意している。
妻と息子と滞在して2週間という露天商のヌマンシャさん(33)は「出身地のパレンバンなどでもイティカフをしたことがある」と自慢気だ。奇数日は2倍の売り上げになるという、目玉商品の木製歯ブラシと香水の袋を抱え、スブー(朝のお祈り)を終えて一眠りした後、さっそうと街に繰り出していった。(中島昭浩、写真も)