コーヒーから見る環境問題 子ども向けに出版 名古屋大原田教授

 名古屋大学大学院教授で森林政策学専門家の原田一宏さん(50)が、スマトラ島などのコーヒー農園での調査研究をまとめた「コーヒー豆を追いかけて 地球が抱える問題が熱帯林で見えてくる」をくもん出版から出版した。研究過程で出会った人たちとのやり取りやハプニングなどのエピソードも交え、子どもたちにわかりやすいようイラストや写真を添えた。「子どもから大人まで、インドネシアに住む日本の方々に読んでもらいたい」と話している。
            
 原田さんは特に熱帯林と人との関係について調査を重ねてきた。1997〜2000年には国際協力機構(JICA)の環境教育専門家として西ジャワ州ボゴールに滞在し、その後もインドネシア科学院(LIPI)の客員研究員を務めるなどたびたびインドネシアを訪れていた。日本のスーパーで売られていたフェアトレードのコーヒー豆が北スマトラ州リントンニフタ産だったことに興味を持ち、約7年前に、コーヒー農家の生活や農園周辺の熱帯林環境について調査を始めた。
 コーヒー豆の栽培で、熱帯林の木がたくさん切られていないか? 森が減って野生動物と人間の衝突が起きていないか?——本では、インドネシアやベトナム、ネパールのコーヒー農園を調べ歩き、農民たちにインタビューを重ねて分かったことを、実際の会話を交えながら紹介。調査結果だけでなく、調査過程を書くことにこだわった。
 背景には「科学者」や「研究者」を夢見る子どもたちへの思いがある。「技術的な実験をする研究者を思い浮かべる子が多い。現地に入って、時間をかけて人々に話を聞き調査するフィールドワークという研究もあることを伝えたかった」。インドネシアでは2度マラリアにかかり、ネパールでは野生のトラが住む森を冷や汗をかきながら歩くなど、調査では危険な体験もしたという。それでも「自分の目で確かめ、自分の耳で聞き、その状況を正確に伝える」ことが大切だと話す。
 本ではコーヒーの歴史や各国の飲み方の違いから始まり、アブラヤシ農園開発や地球温暖化による森林破壊、それによってすみかを奪われたスマトラゾウがコーヒーの木や人間に危害を加えたこと、熱帯林を守るために政府が国立公園を整備した話なども解説。身近なコーヒーをきっかけに環境問題が見えてくる。
 対象は小学校高学年から。A5判112ページで税抜き1400円。(木村綾、写真も)

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