中国寺院でブカ・プアサ 金徳院初の試み
西ジャカルタ区グロドックにあるジャカルタ最古の中国寺院・金徳院でラマダン(断食月)中、ブカ・プアサ(1日の断食明け)の食事を無料配布している。1650年の建立以来初の試み。毎日の日没後、仏教徒やイスラム教徒、キリスト教徒などが集い、宗教の違いを超えてにぎやかに断食明けを祝っている。
ラマダン中は各地のモスクで食事が配布されるが、宗教が違う中国寺院では珍しい。金徳院があるのは、1998年の反華人暴動では大きな被害を受けた華人街グロドック。昨年9月に金徳院のアドバイザーに就任した高速道路会社経営のユスフ・ハムカさん(60)の発案で、ことし初めて食事配布を始めた。
華人でムスリムのユスフさんは「ムスリムの大切な行事を仏教徒の友達とも共有したいと思い始めた。インドネシアには(宗教の多様性を認める国家5原則の)パンチャシラがある。このブカ・プアサには、宗教関係なく誰もが来ていいんだ」と話す。
ユスフさんの呼びかけに応じる形でボランティアに名乗り出たのは、タナアバン市場やジャティヌガラ市場で働く商人たち。約50人がカンパを出したり、盛りつけや配膳を手伝ったりと協力している。同寺院に通う仏教徒が多いが、中にはキリスト教徒やイスラム教徒もいる。
ブカ・プアサの準備が始まるのは毎日午後4時ごろ。タナアバン市場で服を売るアリオンさん(41)も毎日、夕方まで店で働いた後に駆け付ける。「この雰囲気が好きだし、楽しいよ」とにっこり。
この日は、ナシ・クニンに鶏肉や揚げ物、野菜が添えられた。毎日300食を用意。「近隣住民のもうけにつながるように」と毎回、寺院近くのワルン(食堂)から購入したものを提供しているのだという。子どもから大人まで大勢が列をなし、300食はあっという間に配り終えた。
日没を迎えると、寺院内の赤いちょうちんに明かりがともり、お祭りのような雰囲気の中、皆思い思いに食事した。西ジャカルタ区タンボラのプガメン(ギター弾き)、リディアさん(33)は、生後9カ月と8歳の娘2人を連れて毎日ここで断食明けの食事を取る。「例年イスティクラル・モスクで食事をもらっていた。中国寺院は初めてだけど、ここはにぎやかだし、食事もおいしい」と笑顔でほおばった。(木村綾、写真も)