テロ犯が暴徒化 拘置所を40時間占拠 人質の警察官5人死亡 西ジャワ州デポック

 西ジャワ州デポック市クラパドゥアの国家警察機動隊本部内の拘置所で8日夜、収監されているイスラム過激派組織「ジャマア・アンシャルット・ダウラ(JAD)」の構成員ら156人が暴徒化し、警察官9人を人質にして約40時間立てこもった。説得に応じて警察官1人は解放されたが、警察官5人、テロ犯1人が死亡。収監者は投降し、10日午前8時半までに鎮圧された。

 国家警察の調べでは、暴動の発端は、拘置所ブロックCの収監者が面会者からの食事を受け取ろうとした際、刑務官に持ち込みを拒否されたこと。押し問答から他の収監者が加わり、保管されていた銃器や爆発物などを奪ったとみられる。
 警察を「悪魔」と敵対視し、攻撃対象に据えてきた過激派の収監者たちは刑務官を急襲。暴動発生後に駆け付けた国家警察対テロ特殊部隊デンスス88の隊員ら警察官9人を人質に立てこもった。この間、警察官5人を刃物などで殺害、数人を虐待し、このうち女性警察官の1人は歯を抜かれるなどされた。
 収監者は占拠した拘置所内で複数の爆弾を製造し、爆発させた。警察は10日早朝までに投降するよう命じ、同日午前0時すぎに最後の人質1人が解放された。その後、収監者145人が相次いで投降したが、10人は最後まで投降を拒否したため、対テロ特殊部隊が銃撃戦の末、全員の身柄を確保。同8時30分、警察が暴動鎮圧を宣言した。
 国家警察は爆弾の材料について、警察がテロ容疑者から押収した後、まだ拘置所内の倉庫に保管していなかった爆発物が使われたと説明。収監者たちが爆発させたのは、壁を破壊できる爆弾を手にしたことを示そうとした可能性があるとの見方を示した。強奪した銃器には、500〜800メートルの射程距離を持つものもあったという。
 強硬派のオンラインメディア「アラフマ・ドットコム」運営者のムハンマド・ジブリル・アブドゥル・ラフマン氏は地元メディアに対し、「タムリン事件(サリナデパート前テロ)関与者が急襲したようだ。(面会者が持ち込もうとして拒否された)食事が原因と報じられているが、理にかなわない」と話し、あくまで警察への報復攻撃だったとの見方を示した。
 暴動について、ウィラント政治・法務・治安調整相は、「鎮圧はあくまで国際的スタンダードに基づいて実行した」と人権に配慮したことを強調。同拘置所には、宗教冒とく罪でアホック元ジャカルタ特別州知事も収監されているが、「アホック氏は暴動が起きた場所とは別のブロックにおり、安全だった」と説明した。
 145人は10日夕、中部ジャワ州チラチャップ沖にあるヌサカンバンガン島内の刑務所へ移送された。

■JAD指導者の影
 収監者が警察に突き付けた要求の一つには、同拘置所に収監中のJAD指導者、アマン・アブドゥルラフマン受刑者との面会もあった。
 アマン受刑者は2016年1月のサリナデパート前爆破テロ事件の実行を命じたとされ、反テロ法違反の罪で公判中。ヌサカンバンガン島に収監されていたが、ジャカルタで開かれる裁判に出廷するため、昨年から同拘置所へ移送されていた。
 同受刑者は05年以降、爆発物所持で禁錮7年、アチェ山間部の軍事訓練関与で同9年の判決が下った。その後、過激派組織「イスラミック・ステート(IS)」への連帯を表明し、13〜16年の間に国内で発生した複数のテロ事件の黒幕とみられている。米国務省は17年1月、JADを特別指定国際テロリスト(SDGT)に指定している。(配島克彦、リンダ・シラエン)


◇機動隊本部拘置所の暴動の経緯
8日夕
拘置所ブロックCの収監者ワワンが、食事持ち込み禁止に抗議、ブロックB、Aに騒ぎが拡大した。ブロックC、Bの壁が破壊され、洗濯物干しの鉄棒で窓ガラスなどを破壊。灰皿を警察官に投げ付けるなど暴徒化した。この時点で銃器30丁、銃弾300個などを強奪。警察官9人を人質に取り、過激派指導者アマン受刑者との面会を要求した。
9日
警察官5人が死亡。1人はブロックBで人質に取られる。収監者の間で警察官急襲をめぐり賛否が分かれる。警察が外部から食事を届ける。
10日
午前0時
人質の警察官1人が解放される。
午前7時15分
収監者145人が1人ずつ投降し、警察が身柄を確保。
午前8時30分
警察が暴動鎮圧を宣言。

中部ジャワ州へ収監者145人を8台のバスに分乗させて移送。
(国家警察の報告より作成)

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