公平さはどこへ 北ジャカルタ区 アクアリウム村 テントと仮設住民にあつれき

 北ジャカルタ区プンジャリンガン郡パサールイカン地区の漁村「アクアリウム村」には、強制撤去された住民向けに3月末に完成した仮設住宅と、以前から残るテント2張がある。新たな生活が始まったかに見えた同地だが、テント側にはスンバコ(生活必需品)が支給されないなど、不公平感が漂っている。
 テントに暮らす住民21人のうちの1人は「まるで犬小屋のよう」といい、遠くを見つめる。問題は住民登録証(KTP)に端を発する。仮設住宅は3ブロックで構成され、当初128ユニットが建設される計画だった。しかし、住民代表として州側と協議するダルマ・ディアニさん(41)によると、一部住民のKTPの登録住所が他の場所だったり、州営集合住宅になったりしていたため、90ユニットとなった。州住宅局も計画変更を認めている。

■KTPのステータス
 テントに暮らすウピ・ユニタさん(39)はこの村で生まれた。しかし、ダルマさんのデータによると、ウピさんは「ジャカルタ特別州以外のKTP保持者」で対象外。ウピさんに確認すると、一時ジャカルタ以外の所で働いたことがあるが、もともとの住所で転入を済ませたためKTPは有効なはず、と主張し、意見が食い違っている。

■村は二つに分裂
 2017年の州知事選前からサンディアガ・ウノ現副知事と村の機能回復について連絡を取り合っていたウピさんだが、選挙戦が始まると他のグループがアニス・バスウェダン現知事と約束を取り付け始め、8月ごろに村内が二つの陣営に分裂。村の再生をめぐり関係にひびが入った。
 ウピさんは「私たちの方には政府の支援が周知されていない。設置されたタンクの水を使ったことはないしスンバコも支給されない」と言葉を絞り出す。完成した仮設住宅を14日に視察したアニス知事はテントには目もくれなかったといい、「見舞うことも何人住んでいるか数えることもなかった。公平さが欠けている」と指摘した。

■新隣組長が誕生も…
 21日、イシャ(夜の礼拝)が終わった午後7時半ごろ、村の礼拝所「アル・ジハード」で、アクアリウム村の隣組(RT)長を選ぶ投票があった。候補者が1人のため信任投票になるはずが、全会一致で「賛成!」の声を上げて解散。新隣組長は「住民の団結」を呼びかけた。一方、テント側はKTPが有効とされた2世帯しか投票用紙をもらえなかった。
 仮設住宅を完成に導いた立役者の1人であるダルマさんは「私たちが仮設住宅を作ろうと呼びかけても、今テントにいる人たちは反対した。でも完成したら入りたいと言う。うまみを求めているだけ」と漏らす。
 アホック元知事の洪水対策に伴う住居取り壊しなど、強硬姿勢を批判し、住宅撤去なしのジャカルタ州政を掲げたアニス知事。現在もテントに住む住民21人にどう対処するのか、注目が集まる。(中島昭浩、写真も)

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