陸軍病院院長に休職処分 医師会、倫理規定違反で 政界重鎮らは処分疑問視

 インドネシア医師会(IDI)医療倫理協議会(MKEK)はこのほど、倫理規定に抵触したとして、放射線医学の権威でガトット・スブロト陸軍中央病院(中央ジャカルタ区)院長のテラワン・アグス・プトラント医師(53)に1年間の休職処分を科した。同院長の確立した脳卒中治療法が問題視されたためだが、過去に診察を受けた政界重鎮からは、処分を疑問視する声が上がっている。

 医師会の倫理法廷決定(3月23日付)によると、処分は「脳卒中患者の回復を約束するような広告で自身を宣伝した」ため。
 これは、倫理規定4条の「医師は自身の功績を賞賛することを避けなければならない」と、同6条の「検証を終えていない新たな治療法を導入、公表する時は社会不安を引き起こす恐れがあり、十分注意しなければならない」に反するという。
 処分期間は2月26日〜2019年2月25日。同決定には医師免許取り消しを求める文言も併記された。
 これに対し、テラワン院長は4日、「国軍の一員として(自身を)宣伝したことはなく、科学的に正直に技術を説明しただけ」と反論。陸軍出身のユドヨノ前大統領は5日の会見で「テラワン院長とは知り合いだ。素晴らしい実績を持つ医師で、処分を科されるいわれはない」と擁護し、「問題が長引くようなら手を差し伸べてほしい」と政府に呼び掛けた。
 政府や医師会の対応に注目が集まる中、ニラ・ムルック保健相は「医師会の対応を待つ」と静観の構えを示した。国会第9委員会(健康、福祉)は9日に医師会など関係者を招集し、事情を聴く。
 テラワン院長は1990年、ガジャマダ大学(ジョクジャカルタ特別州)医学部卒。26歳から陸軍医として働き、現在の階級は陸軍少佐。大統領府の専属医も務める。
 2004年以降、脳卒中治療に使用される血管造影検査のデジタル差分血管造影法(DSA)について研究を続け、術後4〜5時間で脳卒中の回復が見込める治療法を確立。16年には、この治療法についてまとめた論文をハサヌディン大学(南スラウェシ州)に提出して博士号を取得した。
 この論文については、医学界で賛否両論が上がったが、インドネシア記録博物館(MURI)は17年、脳卒中治療法の発明とDSAを最も多く施術した医師としてテラワン院長を認定した。ドイツでも医療現場に取り入れられ、尊敬の意を込めて「テラワン・セオリー」と呼ばれているという。
 国内では、トリ・ストリスノ元副大統領やヘンドロプリヨノ元国家情報庁(BIN)長官、グリンドラ党プラボウォ・スビアント党首ら、要人もテラワン院長のDSA治療を受けている。特にヘンドロプリヨノ氏は15年、自身のコンサル会社を通じてテラワン医師を表彰し、「ノーベル賞受賞間違いなし」と絶賛した。(中島昭浩)

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