人手不足、連携不足 38件は工事再開へ 高架建設事故調査

 高架工事現場で事故が多発したのを受け、全国各地の工事を一時中断させて実施した安全調査で、政府はこのほど、近年急増した建設事業に必要な人材育成が追いつかず人手不足が深刻化しているほか、工事関係者の間で生じた連携不足が事故につながったとの見解をまとめた。調査した高架道路・線路事業計40件のうち、2月28日時点で安全を確認した38件の工事再開を許可。引き続き安全対策の見直しを進めている。

 公共事業・国民住宅省の建設安全委員会(KKK)のシャリフ・ブルハヌディン委員長によると、安全調査では、事業や建設作業内容など各社に書類の提出と口頭での説明を指示し、現場の立ち入り検査も実施した。
 事故原因として、建設コンサルタントと現場作業員の連携ができていない▽現場監督の指示が行き届いていない▽作業員へのトレーニング不足——などを指摘。連携不足は、全ての工事関係者の間で見られ、これが大きな問題になっているとの見方を示した。
 調査後、2月中に工事の再開許可が出た事業は高速道34件、線路4件の計38件だが、うち10件では高架建設の作業見直しや調査、監視などを続ける。大量高速鉄道(MRT)では、高架路線の橋桁敷設を終えていたため、駅舎建設など工事は続けられた。
 ジョコ・ウィドド(通称ジョコウィ)政権は2014年以降、目玉政策として、国内各地でインフラ整備を急ピッチで進めてきた。
 しかし17年8月以降、建設現場で少なくとも14件の事故が続発。うち8件は高架建設現場での事故で、少なくとも8人が死亡、10人以上が負傷している。

■事業額は毎年倍増
 このうちの7件は、国営建設ワスキタ・カルヤの子会社が請け負う建設現場で発生した。
 「ここ3年間で事業数が急激に増え、対応できていなかった。今後は請け負う事業の数を減らしたい」ワスキタ・カルヤのムハマド・ホリック社長は28日の会見で遺族らに謝罪し、事故原因と今後の対策について説明した。
 同社長によると13〜15年の3年間、建設事業への総投資額は10兆〜15兆ルピアだったが、16年は24兆ルピア、17年は45兆ルピアになり、15年以降は毎年約2倍近く急増してきた。
 一方、人的資源の面では、過去3年間で追加された作業員数は毎年20〜30%ほどで「足りていなかった」と認めた。
 同社長は現場体制のほか、18年の新規契約目標(総額70兆ルピア)など請け負う事業内容も見直す方針を表明。また制裁措置の一つとして、4月6日の株主総会を経て役員を再編するとした。
 インドネシア技術者協会(PII)によると、17年時点で建設業に関わる資格を取得し専門知識を有する人材は約15万人。
 建設事業数が急増する中、現在50万〜70万人の人材が必要になっているという。
 PIIのヘル・デワント副会長は「クレーンを使うつり荷作業など高架建設の技術者は約7千人しかいない。人材育成が喫緊の課題だ」と強調した。 (毛利春香) 

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