出稼ぎ家政婦が虐待死 政府 マレーシアへ派遣停止検討

 マレーシアで家政婦として働いていた20代のインドネシア人女性が11日、雇用主から食事制限などの虐待を受けた末に栄養失調で死亡した。マレーシアへの出稼ぎ労働者数は2017年、約9万人と国・地域別で最多だったが、事件を受けて政府は家政婦派遣の一時停止を検討している。非営利団体からは出稼ぎ者の人身売買を指摘する声も上がっている。

 労働者派遣保護庁(BNP2TKI)によると、女性は東ヌサトゥンガラ州クパンのアデリナ・リサオさん。14年9月までは正式な手続きを経てマレーシアで働いていたが、いったん帰国した後、同年12月に非公式な仲介業者を通じてマレーシアに再び渡っていた。アデリナさんは当時17歳だったが、業者は22〜23歳と偽った書類を用意したと報じられている。
 地元メディアによると、アデリナさんは10日、頭や顔、手足を負傷した状態で、マレーシア・ペナン州の雇用主宅のベランダにいたところを警察官に保護され、搬送先の病院で翌日死亡した。アデリナさんの遺体は17日にクパンの空港に到着し、遺族らは無言の帰国に涙した。
 雇用主はアデリナさんに食事を十分取らせず、飼い犬と一緒に屋外のベランダで寝かせていたという。同庁は死因は栄養失調と貧血で、雇用主が長期にわたり放置した疑いがあると指摘。暴力を振るわれた痕跡はなかったが、右手に動物にかまれたような傷、左手に塩酸のようなものをかけられた跡があったという。マレーシア警察当局は雇用主の女(36)とその家族の計3人の身柄を拘束し、殺人容疑での立件を視野に取り調べている。
 同庁の統計によると、17年にマレーシアへ出稼ぎに行った人は8万8991人。同年にマレーシアで死亡した出稼ぎ者は69人だった。
 出稼ぎ労働者を支援する非営利団体「ミグラント・ケア」は出稼ぎ者の病死が相次いでいることなどを問題視、「アデリナさんを雇い、書類を偽造し、非公式なルートでマレーシアに送った人身売買組織をインドネシア政府は明らかにすべき」と訴えている。
 事件を受け、ルスディ・キラナ駐マレーシア・インドネシア大使は地元メディアに「アデリナさんと同じようなケースが再び起きないよう、出稼ぎ労働者の雇用体制を再構築する必要がある」と派遣の一時停止の必要性を訴えた。
 マレーシアのアフマッド・ザヒド・ハミディ副首相は家政婦の派遣停止は避けたい考えで、「制度に欠陥があるのなら見直していきたい」と述べた。近く、インドネシアのハニフ・ダキリ労働相と会談予定だとしている。(木村綾) 

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