「何もかも焼けた」 268棟延焼、1300人超被災 西ジャカルタで大火
西ジャカルタ区タマンサリ郡クルクットの住宅密集地で27日未明から朝にかけ、268棟を焼く大火があった。焼け出された住民は1300人強。発生から一夜明けた28日、焼け跡からうっすらと煙が立ち上る現場では、「ゴトンロヨン(相互扶助)」を合言葉に、家を失った住民らが協力してがれきの撤去作業に精を出していた。
記者が現場を訪れたのは、27日午前2時ごろの出火から約35時間が経過した28日昼ごろ。火元となった2階建て民家の付近では建材などがいまだにくすぶり続け、住民たちが鍋にくんだ水をかけて鎮火を試みていた。
現場は車の通行が困難な入り組んだ住宅密集地。消防車30台が出動し、鎮火まで約5時間を要した。負傷者数は不明だが、幸いにも死者はなかった。
火元の家の隣に住むラフマッドさん(63)は「火が燃え広がるさなか、とにかく妻を逃げさせ、男たちで避難誘導を行った」と振り返った。
未明の火災で、多くの住民が何も持たずに逃げた。チャチャップ・ヘルマワンさん(31)の自宅も跡形なく、がれきと化していた。「何もかもなくなってしまった。土地証明書とオートバイの鍵を見つけないと……」と、すすだらけの手でがれきと灰の山をかき分けていた。
28日時点で、住民1327人が避難テントや近隣のモスクに身を寄せている。州社会局や赤十字が設置したテントでは衣類や食べ物の支援物資が配られ、限られた下着やおむつを手に入れようと女性たちが群がった。
出火原因は放火
西ジャカルタ区警の調べでは、出火原因は放火。火元の家に住んでいた男性がガソリンをまいて火を付けたという。同区警は29日までに、この男性を放火の疑いで逮捕。調べに対し容疑を認めているという。
近隣住民らによると、男性は20代後半のオンライン・オジェック(二輪タクシー)の運転手で、母親ときょうだいの4人暮らし。違法薬物の常習者とみられ、数年前に離婚して以来、感情的になることが時々あったという。放火する直前も妹とけんかをしたらしい。(木村綾、写真も)