露店街から観光地へ コタトゥア地区カリ・ブサール
通りの左右両側に所狭しと並ぶ露天商。夜になると、薄暗いこの一角に灯がともり、早朝まで大音量の音楽が響くパサール・マラム(夜市)になる。
数年前まで西ジャカルタ区コタトゥアのカリ・ブサール地区は、ファタヒラ広場からあふれ出した露店街として知られていた。当時、ここを拠点にしていたダフィッド・クリスティアン・マヌルンさん(37)は「かばんや玩具などを売って、1日100万ルピアは稼げた」と話す。
だが、アホック知事が2015年、再開発計画を掲げて露天商を撤去し、オランダ時代の跳ね橋「真珠の橋」付近に収容した。観光客でにぎわうファタヒラ広場からわずか約150メートル。2017年9月、任期を終える直前のジャロット知事が開所したが、今も客足は鈍いままだ。
跳ね橋周辺の沿岸はまだ工事中で、川沿いの老朽化した建物も放置されており、跳ね橋から入りづらいという。昨年末に視察に来たサンディアガ・ウノ副知事は「先に(中央ジャカルタの繊維市場)タナアバンを整備してから」と言い残していったという。
コタトゥアの入り口にオフィスを構える週刊誌「アムニシ」のヘンドラ・ウスマヤ編集長(52)は「コタトゥア再開発は知事の采配に左右される部分が大きい」と指摘する。
華人の有力者が保有する建物も多く、カリ・ブサール南端にある建物は華人の元国会議員が管理する。華人団体の事務所や漢方医師が入居するなど、華人社会との結びつきも強い。華人のアホック氏だからこそ短期間で整備できた部分もあるという。
17年10月に就任したアニス・バスウェダン知事は、コタトゥア北端にある海洋博物館裏の漁村整備を進めているが、コタトゥア再開発に関する具体策は提示していない。
カリ・ブサール沿いには個人経営の飲食店が集まる店舗もオープンした。ミー(麺)を売るティティンさん(56)は「タナアバンみたく露天商を優遇して、場所代を払っている商人を軽視するようなことにならなければいいけど」と不安もみせた。(配島克彦、写真も)