遊歩道に浮き桟橋 カリ・ブサール水上公園が完成 コタトゥア再開発事業
オランダ統治時代の建造物が並ぶ西ジャカルタのコタトゥア地区に、カリ・ブサール水上公園が完成した。露天商で埋まっていた川岸の通りは石畳造りの遊歩道になり、メタンガスが浮いていた川も浄化された。300年以上の歴史を持つ同地区のユネスコ世界遺産認定を目指し、着々と整備が進められている。
カリ・ブサール水上公園は、19日に日本・インドネシア国交樹立60周年オープニングイベントが開かれたファタヒラ広場の西側に造られた。
西ジャワ州ボゴールから流れ込むクルクット川の両岸約200メートルに、石のブロックを敷き詰めて幅約10メートルの遊歩道を整備。川岸には半円形型のバルコニーを設け、中央部に造られた幅30メートルの橋が両岸を結ぶ。川には浮き桟橋を設置。川岸から降りて水面を歩くこともできる。両岸に並ぶオランダ時代の歴史的建造物を一望できる絶好の写真スポットになりそうだ。
■財閥のCSR事業
カリ・ブサールの再開発事業は、財閥と連携して企業の社会的責任(CSR)事業を推進したアホック元ジャカルタ特別州知事時代に着手。不動産開発大手のサンプルナ・ランドがカリ・ブサール沿いの露天商の移転事業とセットにして手掛け、それぞれ2700億ルピアと140億ルピアの事業費を負担した。
州観光局管轄のコタトゥア地区管理事務所によると、カリ・ブサール沿いの歴史的建造物は所有者が時代ごとに代わり、現在は大多数を個人や民間企業が保有する。国有企業保有の建物もあるが、各社が予算を投じて改修を進めてきたという。
再開発計画は第一段階として、コタトゥアの中心地であるファタヒラ広場周辺に集中していたが、これがいったん完了して第2段階に入り、カリ・ブサール沿岸の整備に着手。南端は中銀博物館裏、北端は跳ね橋として使われた「真珠の橋」までの全長約550メートルで、今回完成した南側半分は来月にも開所する予定だ。
観光地としてコタトゥアの再開発が急速に進む背景について、同事務所のノルフィアディ・スティオ・フソド所長は「国内外の観光客を見込んだビジネスとして魅力が増している」と指摘する。
■歴史遺産の活用へ
コタトゥアはオランダ、日本軍政期を通じ、植民地支配を象徴する地区だったこともあり、長年再開発も進まず、老朽化した建物も放置されてきた。ノルフィアディ所長は「負の歴史を記憶に留めるとともに、二度と繰り返してはならないと次世代に継承する場所にするためにも再整備する意義がある」と説明する。
ただ、「過去の呪縛にとらわれず、あくまで未来を見据えるべき。例えば、歴史遺産の保護や活用などについて、ジャカルタの姉妹都市である東京都と人的交流を図るなど、交流活発化のための場所にしていけたら」と話した。(配島克彦、写真も、2面に関連)