【フィンテック元年 (上)】農村に金融サービスを 銀行、外資参入相次ぐ 口座未保有者にアクセス

 2018年はフィンテック産業が大きく飛躍する年と期待される。国内でスマートフォンの普及が進む一方で銀行口座を持つ人口が全体の4割に満たない。遠隔地の住民が金融サービスにアクセスできるシステムの需要は高く、大手銀行や外資の参入も相次ぐ。拡大する産業に対し、政府が1日に中銀令を施行し、規制をかけて安定成長に導く動きもあり、今後の動向に注目が集まる。
 国内の銀行の貸出残高は国内総生産(GDP)の4割弱にとどまる。島しょ部や農村部での銀行の支店開設は費用がかかり、収益も低い。フィンテックは8千万人以上とされる需要に対応する形で成長してきた。
 フィンテックのサービスはモバイル決済や送金など多岐にわたる。インドネシアで大きな成長を示しているのが、インターネット上で貸し手と借り手をマッチングさせるサービス「ピア・ツー・ピア(P2P)」だ。国内には約5600万の中小・零細事業者がいるとされる。金融庁(OJK)によると、中小・零細事業者には約1200億ドルの資金需要がある一方で、融資が実行されるのはその4割弱だという。
 OJKのフィンテック金融監督局(ライセンス・規制担当)のヘンドリク・パスサギ局長は、じゃかるた新聞の取材に対し「2016年約2500億ルピアだったP2P融資総額は17年に10倍程度に達するだろう。18年は5兆ルピアを超える」と予測する。
 OJKは既存の金融機関とフィンテック企業の協業による顧客獲得やネットワーク拡大などの相乗効果を期待する。国営ラクヤット・インドネシア銀行(BRI)はことし第1四半期までに地場フィンテック企業の株式の半数を取得し、決済や口座振替などのシステム改良を図る。
 これに先駆け、民間大手セントラル・アジア銀(BCA)は17年1月、2千億ルピアを投じてフィンテック企業に投資する新会社を設立。国営マンディリ銀行もベンチャーキャピタル部門を設立し、事業拡大を目指す。
 外資の進出も活発だ。正規のライセンスを申請するためには地場のパートナーとの提携が必須となる。中国系のゴー・ルピアは17年4月設立。1カ月以内に返済する「ペイデイローン」(借りた日の次の給料日に返済するモデルの消費者金融)が成功し、自社アプリのダウンロード数は7万件を超えているという。
 ほかにも中国系企業の進出が相次ぐ。未発達な市場に資本を投下してビジネスを拡げる手法は、電子商取引(EC)最大手のアリババ・グループがインドネシアの通販大手トコペディアやラザダに出資してきた先例がある。

■強まる政府の規制
 フィンテック企業は200社以上あるとされる一方で、OJKに登録済みの企業は27社、申請途中にあるものが32社。実態との乖離(かいり)を埋めるべく、調査を進めている。
 中央銀行もフィンテック企業に登録を義務づける内容の中銀令(2017年第19/12号)を発令、ことし1月1日に施行した。消費者保護の観点から金融サービスの適正な運用や個人情報の取り扱いなどへの監視を強化する。また、仮想通貨ビットコインについては正式な支払い手段としては認めず、乱高下するビットコインの取引で生じるリスクを防ぐ構えだ。
 先行する中国のP2Pでは有利な運用をうたい資金を集める詐欺事件も多発している。地盤が盤石ではないフィンテック企業の廃業も多い。地方の成長を支えるシステムに成長していくか。ことし始まる規制の運用が鍵を握る。(つづく(平野慧、坂田優菜)

◇ フィンテック 金融(ファイナンス)とIT(情報技術)を合わせた造語。スマートフォンなどを通じて提供される新しい金融サービスを指す。融資や決済以外にも保険や資産運用などさまざまな分野での活用が期待される。米国や中国で発達し、近年は東南アジアやアフリカ、中南米などの新興市場で勢いを増しつつある。

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